日本の大型店が東南アジアで流通革命の真っ最中


第301条が日本の物流に対する考え方を改善するきっかけになる
もし以上述べた私の判断が正しいとすれば、「消費者不在」の国に対して物を売りつけようとする人々は、多分、「ノレンに腕押し」でいくら頑張ってもさっばり手応えがないし、やきもきさせられるのがおちだろう。もちろん、一億二○○○万人も人口があるのだから、消費者がいないわけもなく、物がまったく消費されないということでもない。また物を安く売っているところがあるのに、人が全然、寄りつかないということでもない。しかし、せっかく物を安く提供しても、物流業者の手に渡り、幾手か経て、売り場に並ぶころには、全国一周をしてやっとそこに辿りついたのではないかと思うほど高いものになってしまっている。牛肉でもオレンジでも、日本に物を売ろうとする外国人は、日本国内に橋頭量を築いてそこで産地直売の店でもつくらない限り、安値で消費者と直結することはまず不可能であろう。「輸入品は安いよ」ということを消費者に知らせたかったら、よほど PR を徹底させるとか、消費者の再教育からやりなおすよりほかないだろう。物を買ってもらうのに、消費者の教育から始めるようなそんなまどろっこしいことはとてもやってはいられない、と考えるならば、日本人に受け入れられそうな売り込み方をするという方法もある。日本人が外国から物を購入するについて最大の非関税障壁は消費者自身であると言ったが、その次の障壁は何といっても、日本のお役人たちの頭の中につくられた障壁であろう。さきにも述べたように、日本のお役人たちの頭の中には生産者だけがあって、消費者はない。輸入に制限を加えたり、保護関税を設けたりするのは、いずれも国内生産業者の利益を守ることに主眼がおかれている。日本の米作農家でさえも、早晩、米の一部輸入は不可避と見ている。そのためには自主流通米を普及させて、産地や銘柄を消費者に徹底させる必要があると痛感している。ところが、農林水産省のお役人や米を扱う特権にあぐらをかいてきた農協の人たちは、自分たちの縄張りを荒らされることに対して徹底抗戦の姿勢を見せているだけである。生産者よりも、保護者を自任している人たちのほうがずっと頑固であるために、これらの人々を徹底撃破しない限り、日本の消費者たちをお役人たちの束縛から解放することはできないであろう。ということは当面、アメリカの第三○一条しか日本人に門戸を開放させる有効な手段はないということにほかならない。
アメリカ人も度重なる交渉の不調で、日本の役人たちの手口をどうやら覚えたようである。ヤイター通商代表も、アメリカの大統領選挙を目前に控えて、精米業者の第三○一条適用要求はさすがに却下したが、それは次の農作物貿易交渉で日本側から何らかの誠意を見せ
ることを条件としている。もし日本が依然として頑なに拒否を続ければ、報復措置を講ずるという意思表示をしたようなものであろう。したがって、江戸幕府に対するデモンストレーションが開港のきっかけになったように、第三○一条が日本人の物流に対する物の考え方を改善させる最も有力なきっかけになることはほとんど間違いがないと言ってよい。
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