日本人のサービス精神は世界の人々に知られていない部分
こうしてみると、サムライたちが殿様の家事使用人だった時代から、人に仕えることは日本人のお家芸であった。そういう人々が明治維新以後、職を失って町人になったとき選んだ新しい仕事は、大半が殖産、すなわち物をつくる仕事であった。その分野でも落武者たちは自分らだけの部落を形成するようになったが、その組織はトップに社長がいて、社長に社員たちが仕えるという形になった。会社そのものが「チョンマゲ」の精神で統一されていたので、それが会社の生産する商品のなかにも脈打つようになった。
たまたま日本人のつくる工業製品の優秀性が真っ先に外国人によって認知され、それがとぶように売れるようになったので、「なぜ日本人にこんなすぐれた製品がつくれるようになったか」ということだけが関心の的になっているが、その背景には日本人のサービス精神が流れている。また流通業のなかにも同じ精神が流れているし、とりわけ日本のサービス業はそうした神経の行き届いたサービス精神によって貫かれている。そういうことを外国人が充分承知していないと、今後、日本の流通業やサービス業が海外に進出し、国際舞台で人気を呼ぶようになったとき、「日本政府がまたしてもアン・フェアなことを始めた」「政府はサービス業の海外進出に対しても補助金をあたえたり、手厚い保護をあたえたりしているに違いない」と誤解しかねない。
サービス業は、人を相手にサービスを提供する商売だから、国内で物をつくって外国へ売る生産事業のように、そう簡単に外国人に知ってもらうことはできない。少なくとも、日本に来てもらわなければ、また実際にサービスを受けてもらわなければ、良い悪いの評価はしてもらえない。サービス業の活動範囲が国内にとどまっている限り、それを評価するのは、日本人か、日本に来た外国人だけで、日本人の持っている特技のなかで最も世界の人々に知られていない部分といってよいだろう。今までのところは、日本料理屋の海外進出が一番目立っているから、日本的サービスといえば、すぐにも日本料理屋で働いている板前さんやアルバイトで働いている留学生やキモノを着た駐在員の奥さんたちのサービスぶりが頭に浮んでくるに違いない。もちろん、そういう人たちも日本人に違いはないが、これからの日本では生産事業よりもサービス業にウエイトのかかる脱工業化がすすむし、日本人の海外旅行がふえるにしたがって航空会社、ホテル、運送会社の海外進出もふえる。また金融の国際化にともなって銀行、証券会社、リース会社などの営業網も世界的スケールに拡がっていく。
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