国際通貨であると同時にアメリカの国内通貨というドルのニ面性

代りに登場してきたのが大恐慌の当時、最も経済力の強かったアメリカの通貨である。金が交換手段として満足な役割を果たせなくなれば、その代役をする物が必要になる。どうせ何かを使わなければならないとすれば、一番強い通貨であり、当時まだ金とリンクされていたドルを選ぶのはごく自然の動きといってよいだろう。おかげで約半世紀にわたってドルが世界通貨の役割を果たしてきたが、ドルは国際通貨であると同時に、アメリカの国内通貨であるという二面性を持っている。日本でも西ドイッでも、あるいは台湾でも、外貨をたくさん溜め込んでいる国々は自分たちの所有しているドルを準備金として自国紙幣を発行している。その昔、ドルが金とリンクしていたので、ドルで持っているということは、ドルの裏づけになっている連邦準備銀行の金で持っていることになるから、金で準備金を持っているのと同じだと強弁した。のちに、ニクソン大統領のときにドルの発行を金準備から完全に切り離してしまったが、金そのものが通貨であることをやめてからすでに久しいし、金そのものが通貨と連動するどころか、下落の一途を辿るようになると、通貨と金を結びつけるきずなはいよいよ薄いものになってしまった。ドルが金の代役として何とかスムーズに交換手段の役割を果たしている限り、ドルの二面性はあまり懸念材料とはならなかったのである。
しかし、それはアメリカの経済力が強大で、アメリカの貿易収支も入超が続き、かつまたアメリカの国家財政が健全なことが大前提になっていた。諸外国に対してアメリカが大債権者である限り、ドルがいくら発行されても回収のきくものだと思われ、世界中がドルに対して不安を抱かなかった。ところが、レーガンというアメリカの歴代大統領のなかで最も経済観念のない大統領が出現するに至ってこの大前提が崩れてしまった。国防費を前任者の倍以上に引き上げ、しかもそれを増税で賄わずに、国債で賄った。そういう無理がきいたのは、諸外国に対しアメリカにそれだけの信用があったからであるが、二百年かかってアメリカ人が築きあげてきた信用をレーガンは僅か八年間で台無しにしてしまったのである。

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