ドルの衰弱で、日本の金融機関の出番


金本位制からの離脱は経済が発展した結果
人も世界を狭しと駆けまわるようになったが、人に負けず世界中を駆けまわるようになったのはお金であろう。お金が自由に移動するようになったために、過去の経済理論では今、起っている現象をほとんど説明できなくなってしまった。
金本位制の下ではすべての貨幣は金にリンクしていたので、一ドルが二円というよりは一ドルと等価の金が二円に相当したのである。その時代には、金準備をしなければ紙幣を発行できなかったので、Aの国がBの国から物を買いすぎて支払い超になれば、Aの国は紙幣を回収し、それに相当する金をBの国に引き渡さなければならなかった。金準備が減ると、その分だけ貨幣の流通量が減少し、その半面、物がふえるからデフレ気味になって物価が下がる。反対にB国では受け取った金を準備として通貨の発行がふえ、物は輸出した分だけ減るからインフレ気味になり、物価が上がる。すると、今まで輸出していたのが輸出しても引き合わなくなり、輸出がとまって逆に輸入がふえる。かくて二国間のアンバランスが是正されて再びバランスに向う、と説かれていたのである。
ところが、金本位制の時代にも実際には完全な自由貿易が行われていたわけでもなければ、金の移動がまったく自由だったわけでもない。輸入がふえそうな気配をみせると、どこの国でも金の流出を防ぐために、輸入の制限をしたり、関税を引き上げたりして輸入の増大を防いだ。それでもお金の流出を防ぐことができなかった場合は、金利を引き上げて金の流出を防いだ。高い利率の国債を発行したり、中央銀行の公定歩合を高水準に維持すれば、一時にせよ、資金を国内にとどめておくことはできる。その代りその分だけ金利の流出はふえる。ただし、それでもなお輸入がふえて国際収支の赤字が続けば、ついに債務が金準備をオーバーして、金で決算をせまられたときに支払い不能におちいってしまう。どこかの国が他の国々に対して異常に債務を背負うようになれば、金本位制はうまく機能しなくなって、 一九二九年の大恐慌のような、パニックが起ってしまうのである。
また、経済のスケールが大きくなって、生産量が三倍にも五倍にもふえれば、金を準備として発行される貨幣の量では足りなくなって、取引がスムーズに行われなくなる。やむを得ず銀行が商品や倉出し証書や資産を担保にしてお金の融資をするが、その量がふえればふえるほど金本位制が有名無実になってしまう。それが何らのきっかけで、金への兌換を要求されればたちまち支払い不能におちいって金本位制に踏み切らざるを得なくなるし、金に比して生産のスケールがずっとふえてくると、物価が大暴落して収拾がつかなくなる。金本位制からの離脱は、経済に矛盾が生じた結果というよりは、経済が発展した結果、金準備による発行貨幣量では貨幣としての役割をうまく果たせなくなったから、と見たほうがいいだろう。
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