海外で生き残るノウハウづくりが次の課題


外国で成功する日本の流通業は「非のうちどころのないサービス」
日本の経済が発展しすぎたために日本人は日本国内に住んでいられなくなる。日本人の海外移動は日増しにふえ、在外日本人の数は五○万人をこえたと新聞も報じている。しかし、その大半はビジネスのために海外に派遣された駐在員であり、移民ではない。社用のために三年とか、五年とか期限を限って海外駐在を命ぜられて赴任する者で、やがて本社へ戻って幹部として出世コースを歩むようになる。海外の経験を持ち、海外の事情に通じていないと、これからの会社経営は難しいと考えられているので、将来、トップになることを想定された毛並みのよい連中ほど一度は海外へ出なければならなくなったのである。だから顔は常に本社を向いており、その土地にしっかり根を下ろすという姿勢はあまりみられない。そのへんが同じ東洋人でも、華僑と呼ばれる人たちと根本的に違ったところであろう。
会社の用で来るのだから、会社のほうを向くのは当然だが、現地の商売のやり方も本社の利益本位である。物を売りにきた場合もそうだし、物を買う場合も同じで、担当者がかわると、契約書に明文化されていない限り、不利な契約はすべて放棄されてしまう。都合が悪くなれば担当者をかえるのは日本人の常套手段で、「前任者がどういったかわからないが、私はそんな契約をした覚えはありません」でうまく責任のがれをする。そういうケースが決して少なくないので、商社マンを初め日本人の評判は必ずしも芳しいものではない。とくに本社では課長か、部長代理程度の地位の者が、現地に行くと、社長とか総経理の肩書になるから、いきなり植民地の総督にでもなったような気分で、修養の足りない者ほど空威張りをする。ザッと見渡しても、東南アジアに行くと、そういう鼻つまみの日本人がゴロゴロしている。
日本人が日本でつくられた商品を売りに来たり、観光旅行に来た日本人相手にお土産を売っている程度のレべルで商売をやっていたあいだはそれでもよかった。しかし、現地に工場をつくって現地の人に売るとか、現地人相手のデパートやスーパーをひらくとか、さらに一歩すすんで現地人相手にレストランやクラブをつくるとか、日本の銀行や証券会社でお金を預かったり、株を売買してもらったりするとなると、土地の人からよほど好感を持たれ、かつ信用されるのでなければ、とても商売にならない。生産工場の場合は、日本の生産技術のすぐれていることや製品の人気が高いことが前提になってスタートしているから、労務対策とマネジメントさえしっかりやっていれば、あまり問題は起らないが、それでも地元に溶け込む努力は必要であろう。流通業について言えば、日本人観光客相手のお土産屋からやっと脱却して地元住民相手の商売に入ってきた段階だが、その場合の日本企業のセールス・ポイントは「非の打ちどころのないサービス」の一語に尽きるだろう。
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