資本は労働資源の未開発国に動き、労働力はその逆の方向へ動く
海外進出は第ニ次産業にとどまらず第三次産業で盛んになる

日本人は金持ちになったというけれども、日本国内で新規の投資をしても昔ほどお金が儲からなくなってしまった。また物価がいよいよ高くなって、国内でお金を使っても使いでがなくなってしまった。売れる値段が物の値段で、お金がいくらでもあれば、いくら高くても物はとぶように売れていく。米や麦や材木や石油は原価がいくらだったか、あまり気にしないですむような値段で加工品が売れていくので、日本国内の物価はますます外国のそれから遊離してしまった。したがって、日本人がつくり出した付加価値のある商品のうち、外国でもそのまま通用する商品だけが外国に売れ、それ以外のものは外国に売れないだけでなく、高すぎて日本に住む外国人たちからも敬遠されている。
たとえば、日本の農産物は、果物のような、日本産がすぐれているものでも、外国へは売れなくなっているし、日本のホテルやレストランのあの値の高さは、どんなにサービスがよかろうとも、外国人の支払い能力をはるかにこえてしまっている。日本の農業技術も、日本のサービスのテクニックも、おそらく外国に比べてすぐれた面がたくさんある。しかし、その結果、日本国内で、日本人に通用するものができたとしても、そのまま外国には通用しそうもない。同じ技術を外国へ持っていって、安い労働力を動員して、日本産と同じグレードの作物をつくるとか、日本に負けないようなサービスをやるのなら、農作物にも、サービス産業にも付加価値をつけることができる。ただし、斜陽化の著しい農業をわざわざ外国へ持っていってやろうと考える人は少ないから、さしあたりは二次産業と三次産業の海外進出ということになろう。
二次産業については、労賃の安い発展途上国だけでなく、労賃は高いが生産性では日本に比して開発の余地の残った先進国に対しても、生産基地の大移転が目下、進行中である。これらの工場が業績をあげる段階に至れば、日本の大幅黒字もそういつまでも続くことはなくなるだろうし、日本における労賃の値上がりは停滞して、新しく開発された地域の労賃が急速に引き上げられるようなことが起るであろう。日本の労賃を引き上げる最大の牽引車になった工業生産の分野で、消費国への展開が進めば、そのときは日本の労働力の開発がほぼ天井を打つときだと考えてよいと思う。
しかし、日本企業の海外進出は二次産業にとどまらず、三次産業の分野でいっそう盛んになるはずである。というのも、日本人は国内では消費者としてまともに扱われず、せっかく値上がりした円もその威力を発揮できないでいるが、一歩外へ出れば、改めて円高の値打ちを実感できる立場におかれるようになるからである。もともと外国から稼いだお金で金持ちになったのだから、そのお金をまた外国へ戻すのは順当なことである。現に私はこの原稿をバンコクのオリエンタル・ホテルで執筆しているが、十年以上前、サマー・パッケージというおトクな三日滞在旅行で来たころは、
日本人のお客はほとんどみかけなかった。三日間泊って、飛行機と交通費込み、朝食込み等いろいろの特典がついて、確か九○○○バーツだった。そのころのバーツは二、二円だったと思うが、円高になるとバーツは六円まで下がった。二人で泊って三日間でたったの六万円になった。これなら誰でも来るんじゃないかと思ったが、昨年あたりから旅行者が急増し、バンコックのホテルはどこも平均八○%の利用率になり、オリエンタル・ホテルのサマー・パッケージも一挙に一万五○○○バーツと値を上げた。
それでも1バーツが五・四円だから八万一○○○円であり、
人気投票世界一のホテルとしてはそう高いともいえない。

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