こうした東南アジアのリゾートがなぜ採算にのるかというと、労賃が日本の十分の一、あるいはそれ以下で、土地代が十分の一、建築費が三分の一、そこにホテルを建てて、軽井沢のプリンス・ホテルの半分の値段で泊めれば、株を上場しても額面の三十倍の値がつくほど儲かるのである。日本人が金持ちになったおかげで次に恩恵を蒙るのは周辺の国のリゾートである。天安門事件で大陸へ足を踏み入れる人が少なくなった分だけ、タイやシンガポールやオーストラリアやニュージーランドへの観光客が爆発的にふえている。ことしはオリエンタル・ホテルの河っぷちのテラスで朝食をとっていても、ほとんど半分が日本人で、台湾人らしい顔もうんとふえてきた。道を歩いていても挨拶されるし、朝食のテーブルについても隣りから挨拶にこられる。この調子では、そろそろ河岸を変えなければならないかと憂鬱だが、おそらく今後、大幅黒字国の人々がますます東南アジアのリゾートにあふれて、リゾート産業は東南アジアの一大産業となるであろう。
日本人の海外渡航者は八九年で一○○○万人を記録することになるだろうが、それらの人々の大半が海外へ行くたびに、宿泊設備を利用し、レストランで物を食べたり、お土産物を買ったりするとすれば、日本人の消費のかなりの部分が海外へ戻されるようになる。比較的早くから海外生活を経験してきた人のなかには、今から物価の高い日本へ帰っても生活をしていく自信がないと考える人は多いし、いっそ住みなれた外国で一生を送りたいと思っている人も多い。今後、海外生活を経験する人がもっとふえれば、老後はもっと物価の安い、もっと生活のしやすい海外で暮したいと考える人はふえることであろう。価格の理論が通用しない、物価があがりっばなしの日本で暮すよりは、そういう国に稼いだお金を持っていって、労賃の安い、その安い労賃が物価に反映しているような国で暮したほうがずっといいにきまっている。こうなると、労賃の高くなりすぎた国から資本は労賃の安い、労働力がまだ未開発の国に移動していく。お金を使う場合も、お金の使いでのない付加価値先進国からお金の使いでのある付加価値後進国に移動していく。そうしたお金の動きをみれば、世界中でこの次どういう地域が経済的に開発されるか、おおよその見当がつく。日本人が海外へ出て新しい工場をつくれば、その土地で日本人のパートナーになった現地人が新興財閥として成り上がることはほとんど確実である。日本人の観光客がこの次、足繁く通うようなリゾート地のホテルは立派に採算にのるようになるはずだから、日本の資本が海外リゾートの開発に目を向けないわけがない。となると、お金も人も続々と海外へ出ていくようになって、国内でいつまでも黄金時代を謳歌してはおられなくなる。

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