スミスの租税負担に関する原則は今日もそのまま通用する性質のものであるが、その後の資本主義経済の発展過程で、貧富の差が顕著になり、資本主義の崩壊と共産主義社会の到来を予言するマルクスの『資本論』が出現した。『資本論』の中でマルクスが叙述した経済理論は、経済社会の現実からほど遠いものであり、その誤謬は、最近半世紀の壮大な実験の結果、ほとんど誰の目にも明らかなものになったが、それにもかかわらず、彼の思想が人類にあたえた影響は計り知れないものがある。とくに富の少数者への集中によって過小消費、過剰生産が生じてパニックが起ったとき、社会主義的な方向にルールを変えさせ、労働者の地位を向上させるうえで大きな原動力となった。
たとえば、一九二九年の世界大恐慌のあと、ルーズべルト大統領が景気刺激策として打ち出したニューディール政策は、ケインズ理論に基づくものであるといわれているが、貯蓄に見合う投資を促すために、国民経済に国家財政が割り込んだ結果は、今日のような「大きな政府」をつくることになってしまったし、また共産主義の向うを張って、先進国が進んで「累進税制」を採用した結果は、国が先頭に立って所得の再分配をすすめ、富の少数者への集中にブレーキをかけることになった。いずれもマルクスの存在を意識したアンチ・マルクス的延命策とみてよいだろう。かくして税金を徴収して夜警的役割をはたしていただけの国家が、国民経済にすすんで関与するようになり、景気の振興や所得の再分配だけでなく、ついには医療制度や老人福祉にまで口も金も出すようになった。一体、どこまでかかわるつもりなのか、はたして国がそんなにかかわってよいものなのか、どこかで線を引く必要があるのではないか、といったことは、今や先進国に共通の重要な課題となっている。
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