また人口が大都市に集中したため大都市とその周辺の土地が値上がりして、大都市に住む人と地方に住む人の資産の格差がついてしまった。アメリカへの輸出が激増して、貿易黒字分をアメリカが印刷したドルで賄うようになると、日本は異常な金あまり現象を起すようになり、株と土地の値段が一段と押し上げられるようになってしまった。このため大都会に住む人と地方に住む人の資産の格差が拡がったばかりでなく、同じ都会に住んでいても、株やマンションを持っている人と、定期預金だけ後生大事に守ってきた人の資産の格差が天と地ほどもひらいてしまった。
こうした矛盾は随所にみられるが、全体としてみれば、戦後、占領下においてアメリカ進駐軍から押しつけられた社会主義的色彩の強い社会制度、経済制度のおかげで、日本では他に類例をみない、富の分配の平等な、かつ階級対立のほとんどみられない「理想社会」が奇跡的に出現した。資源も資本もない国が世界一の金持ちの国になったのも、日本の事情を知らない外国人からみると世紀の奇跡にみえるだろうが、私にいわせると、貧乏国ニッポンが豊かになっていく過程で、よくぞ富の分配をこれだけ平準化することに成功したということのほうがずっと奇跡に近いようにみえる。ただの貧乏国が金持ちを皆、引きずりおろすか、外国に追放することによって、皆でいがみあいながら貧乏する光景は共産主義諸国によくみられるが、金持ちになっていく過程で、分配の平準化に成功した例はそうどこにもみあたるものではないのである。
そういった意味では、戦後日本の税制は、嫉妬に根ざした税制であったにせよ、資本主義に不可避的についてまわる欠陥ともいうべき富の個人集中を回避するに、あずかって大いに威力を発揮しており、それが株や不動産の大暴騰によってやや解体しかけた時点にきているときだけに、改めて評価されて然るべきではないかと思う。
と同時に、これだけ日本経済が欄熟期に入ったにもかかわらず日本人に豊かさの実感が湧いてこないとか、重税感が強いにもかかわらず国家財政に赤字が続いているとか、また円高にもかかわらず輸入品が一向に下がらないとか、地価が高くなりすぎてサラリーマンが一生かかってもマイホームが持てないとかいった社会的矛盾はますます大きくなっている。そうした矛盾を解決する能力を持たない政府では、選手交替してもらったほうがいいという選挙民の声を次第に大きくなっている。
とくに、海外に出かけるチャンスがふえた分だけ、国を絶対視する考えより、国と国を比較できるようになったので、日本の国を支えてきた諸制度も、だんだん見映えのしないものになってきた。外国と比較してみて、外国のほうが有利であれば、人も企業も外国に移転することは、これまでになく容易な時代になっている。

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