どうしたかと言うと、先にもふれたが、航空運賃の安い高いは、国によってそれぞれの事情があるのだから、およそ日本の飛行場に降りる乗客が、日本から再出発する切符は外国で購入しても、日本並みの運賃にすることを要求したのである。特に往復とも、日本で降りる場合、日本から先への往復料金は日本料金にすることをIATAに承認させた。そのため日本経由の航空運賃は今年の夏から一挙に五○%以上もはねあがった。おかげで観光旅行に出た外国人が日本に寄りたくても日本に寄るのを断念するようになり、 日本にビジネスの所用のある人と、日本に出稼ぎに来る連中だけが日本行きの切符を買うようになった。外人観光客の足はいっせいに日本から遠のいてしまったのである。ただでさえ諸外国から閉鎖社会として批判を浴びている日本をさらに一層孤立させることが運輸省の役人の発想だから、いかに消費者が無視されているかおわかりになるであろう。どうやら日本の役人は日本の産業界が独り立ちできるようになってからも、過去の惰性で今なお生産者側の立場に立ち続けており、その立場を変えることは至難の業に属するらしいのである。
その点、アメリカの役所の業界に対する監視の目はきびしい。環境汚染に対してだけは、日本も数々の公害の被害者が出たためにようやく先進国並みに追いついたが、あとはまだまだ追いついていない。アメリカでは国内航空運賃に対しても、自由化をすすめ、自由競争の原理を導入した。その一方で、業界が談合することに目を光らせた。そのために一時期、航空運賃は定価の半分にも三分の一にも割引されるようになり、「こんなことで空の旅の安全が守られるのだろうか」とアメリカを旅行する日本人たちを驚かせたが、「そんなに安いんじゃ飛行機を墜落させるぞ」といって怒るパイロットもスチュワーデスもさすがに現われなかった。こうしてみると、成熟した社会で、役所の果たすべき役割は、生産者を監視して、消費者の利益を守ることであるということがわかる。そういう時代の要請に耳を貸すどころか、逆に消費者から消費税をとって、生産者の利益を守るようでは、広く国民の支持を得られなくなるのも当然であろう。
では日本の役人にそうした頭の切り換えがはたしてできるのだろうか。私はそれはそんなに難しいことではないと思う。消費者重視の世論が喚起され、そうした世論に理解を持った新しい政治家が選出されるようになれば事態は少しずつ好転する。最近は、みていると、アメリカの消費者運動の指導者が日本に招待されるようになったし、「消費者の立場を尊重せよ」という論調もしばしば新聞に登場するようになってきた。一転して、消費者の保護がお役所の仕事になることになれば、お役人の頭も少しずつ切り換わっていくのではないか。一日も早くそうなることを期待したいものである。
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