消費者無視の役人の頭をいかにして切り替えさせるか
では役所が果たす役割の大半がなくなってしまったかというと、もとよりそんなことはない。日本では生産者の利益を役所が庇護してきたおかげで、産業はうまく育ったが、その間に消費者の利益はまったく無視され、生産者と消費者の間に大きなひずみができてしまった。たとえば、日本にもアメリカ並みの独占禁止法がある。公正取引委員会もある。しかし、日本で公正取引委員会の威令が行き届き、業者たちの談合はなくなり、そのために物価を安くするという話はかつてきいたことがない。日本の役所にとって、物価を安くすることは究極の目標でなく、業界が共存共栄することができれば、高価に安定することがむしろ望ましいのである。したがって、畜肉でも、道路でも、政府が先頭に立って独占的な公団公社をつくり、業者に必要な作業を分担させる代りに価格を統一する。納入価格、工事価格はすべて談合で業者に平均に割り当てる。新聞やビールの価格でさえも業界で同時に値上げをすると、独占禁止法にひっかかるから、一社が先頭をきって値上げをし、他の同業が日時をずらしてそれに追随する。
こうした指導要項でやってきたので、およそ許認可事業で、役所の指導方針に抵抗する者は、団結を乱す者として村八分にされたり、冷や飯を食わされたりする。たとえば、京都のタクシー業者はしばしばタクシー料金の値下げを申請したが、一回たりとも許可になったためしがない。企業努力によって消費者にサービスする者は役所の敵とみなされるのである。国内航空運賃もすべて同じ考え方で決定されている。おかげで日本の国内航空運賃は外国に比して異例に高いが、国内はそれで罷り通るとしても、国際路線になるとたちまち割高が目立ってしまう。日本から出発する運賃は、相手国から出発する同じコースの運賃の倍以上になり、それに気づいた利用者が海外で切符を求めるようになった。なかには海外で切符を求め、日本までの切符は破棄し、東京から利用する者も現われた。それでも日本で購入するよりずっと安いのだから、日本の役所の行政指導がいかに生産者寄りであるかがわかる。日本航空がこうした輸入切符を違法として搭乗拒否をして世間の批判を浴びると、運輸省がこれに助け船を出した。
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