プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第33回
特定口座(源泉徴収口座)
―平成15年売却については別途住民税の納税が必要

特定口座を開設し、
源泉徴収を選択した上で、
特定口座内で行なう上場株式等の売却については、
売却損益の計算も所得税・住民税の計算・納付も
すべて証券会社が代行してくれますので、
個人投資家がやるべきことはありません
(ただし、1年間の取引結果が売却損に終わった場合には
確定申告義務はありませんが、
確定申告すると上場株式等売却損の
3年間繰越控除の適用がありますから確定申告すべきです)。

ところで、平成15年度税制改正において
特定口座(源泉徴収口座)の改善改正が行なわれ
上述のように源泉徴収口座は
上場株式等の売却利益に関して手間いらずとなりました。
ではありますがこの税制改正は
年の途中である3月末の国会で決定したため、
改正初年である平成15年については、
上記取り扱いと一部異なる点がありますので
(例えば1月〜3月の売却については
改正が間に合わなかった為等による)説明しましょう。

1.所得税
  平成15年1月から3月までに
  特定口座(源泉徴収口座)内で上場株式等を売却した場合には、
  売却利益に対して所得税が15%源泉徴収されています。

  平成15年4月から12月までの売却については、
  売却利益に対して所得税が7%源泉徴収されます。

  ところで平成15年から平成19年の5年間は、
  上場株式等の売却利益にかかる所得税は
  7%にするとの改正が行なわれています。
  従って、平成15年1月から3月の3ヶ月間については
  所得税が多く天引き(源泉徴収)されていることになります。

  そこで、平成15年12月末に、
  証券会社がその特定口座における1年間の取引結果を集計し、
  最終的な株式売却利益を計算し、
  その利益の7%相当額を上回る金額が
  既に源泉徴収されている場合には、
  その上回った金額相当額を平成16年に
  顧客に還付することになっています。
  すなわち、平成15年1月〜12月の
  特定口座(源泉徴収口座)内の株式売却利益について
  7%の税金となるように年末に精算されますので
  結果として年間を通じれば所得税が
  余分に天引きされる心配はありません。

  平成15年4月末の国会で
  「平成15年から5年間の上場株式等の売却利益にかかる
  所得税の税率を7%にする」ことが決まったので、
  既に15%の源泉徴収が行なわれていた1月から3月については、
  12月末に精算せざるを得ないわけです。
  *平成16年以降は、売却の都度正確な所得税額が
    源泉徴収されます。

2.住民税
  特定口座(源泉徴収口座)内の上場株式等の売却利益に対して
  住民税を源泉徴収することを決めたのも、
  平成15年3月末の国会でした。

  それ以前は株式の売却について
  住民税を源泉徴収する仕組みは全くありませんでしたので、
  その天引きのシステム等仕組みを作るのに
  少々時間が必要です。
  そのため、平成15年の売却については、
  住民税は源泉徴収されません
  (源泉徴収を選択した特定口座において、
  所得税は平成15年から源泉徴収されるものの、
  住民税は平成16年から源泉徴収されます)。

  平成15年の特定口座(源泉徴収口座)内の
  売却利益にかかる住民税は証券会社では完結できないことから、
  証券会社から各市区町村役場に1年間の取引報告書が送られ、
  これに基づいて住民税が計算され、
  平成16年にその納付書が各市区町村役場から
  個人投資家のところに送られてきます。

  個人投資家のみなさんは、平成15年の売却益については、
  送られてきた納付書で住民税を
  自分で納付する必要があります。
  平成15年の上場株式等売却利益が多額に発生した場合には、
  翌年払う住民税相当額(売却利益に対して3%)の納税資金を
  確保しておくことをお忘れなく。
  *特定口座(源泉徴収口座)は、
    平成16年から所得税と同様に
    住民税も源泉徴収されますので、
    自分で納税する必要はなくなります。

  *平成16年からは、特定口座(源泉徴収口座)内の
    取引報告者が市区町村役場に送付されることはありません
    (住民税の納税が源泉徴収で完結するため、
    市区町村役場が納付書を作成する必要がないからです)。

執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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