プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第36回
緊急投資優遇税制の適用。今後の投資行動にご注意

「上場株式等の源泉分離課税の廃止」に伴い、
上場株式等の売却に関する各種特例が設けられました。
そのひとつが塩川財務大臣肝いりで誕生したと言われている
緊急投資優遇措置
「購入対価1,000万円までに関する売却益非課税制度」です。

平成13年11月30日から平成14年末までに購入した上場株式等を、
平成17〜19年に売却した場合がその適用対象となります。
今年(平成15年)と来年(平成16年)については
「その株式をじっと保有している期間。
平成17年になったらドーンと上がれと願っている期間」です。
この平成15・16年の投資行動に関して
ご注意いただきたいことがあります。
緊急投資優遇税制の適用を受ける可能性のある銘柄を、
平成15年・16年に買ったり売ったりしますと、
平成17年以降に非課税措置の適用を
受けられなくなる可能性があるからです。

また、平成17〜19年に、
特例の適用を受けるべく売却するときの留意点もあります。

今回は「緊急投資優遇税制」の概要と
「平成17〜19年に売却する際の注意点」について、
次回は「保有期間である平成15〜16年の注意事項」について
説明します。

1.緊急投資優遇措置とは
  平成13年11月30日から平成14年12月31日までの期間に取得
  (購入または払い込みによる取得に限ります)した上場株式等を、
  平成17年1月1日から平成19年12月31日までの間に
  証券会社等を通じて売却し、
  売却年の翌年3月15日までに
  「特定上場株式等非課税適用選択申告書」を
  税務署に提出した場合は、
  購入対価1,000万円までに対応する売却利益について
  非課税とする制度です。

(1)「購入対価1,000万円」には「手数料」を含みません。

(2)平成17〜19年3年間各々
   「購入対価1,000万円まで非課税」ではなく、
   3年間を通じて合計で「購入対価1,000万円まで非課税」です。

(3)非課税の適用を受ける銘柄・株数は、
   個人投資家が選択できます。

(4)同じ銘柄を複数回に分けて買い増しし、
   その一部を売却して「非課税」の適用を受ける場合、
   「1,000万円」算定上の購入対価は、
   いわゆる税金上の取得費算定ルール
   「総平均法に準ずる方法(移動平均法)」ではなく、
   その購入した株の実際の購入対価によります
   (つまり、個別対応により購入対価を把握して、
   「購入対価1,000万円まで」を算定します)。

2.平成17〜19年の注意点、緊急投資優遇税制の
  適用を受ける場合は、
  特定口座(源泉徴収口座)から引き出してから売却すること
  緊急投資優遇税制の適用を受ける可能性のある上場株式
  (平成13年11月30日から平成14年12月31日の間に
  購入等した株式)を特定口座に組入れることはできます。
  その際、売却利益に関する申告・納税の手続きを
  証券会社に代行してもらうために
  特定口座において「源泉徴収あり」を選択した場合には、
  1点注意事項があります。
  平成17〜19年の3年間に緊急投資優遇税制の適用を受けようと
  株式を売るときに思い出していただきたい点です。

  緊急投資優遇税制の適用を受ける、
  すなわち「購入対価1,000万円までに対応する売却利益は
  非課税」の適用を受ける株式は、
  特定口座(源泉徴収口座)から引き出してから
  売る必要があるという点です。
  といいますのは、現在の税制では
  「特定口座(源泉徴収口座)内で売却した株式は、
  緊急投資優遇税制の対象外」とされているためです。
  緊急投資優遇税制は売却益非課税の特例ですから、
  特定口座(源泉徴収口座)内の売却について
  特例適用を認めますと
  源泉徴収した税金を全額還付する手続が必要となり
  煩瑣ですので、
  「特定口座(源泉徴収口座)」内の売却については
  この非課税制度の適用を認めないことにしたものと思われます。

  上述しましたように、平成17〜19年に
  緊急投資優遇税制の適用を受けて売却する株式は、
  「特定口座(源泉徴収口座)」から引き出して
  「一般口座」に移動してから売却し、
  翌年3月15日までに確定申告する、とする対応が必要です。

執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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