プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第53回 生前贈与のための新相続税制
新制度理解のために
「新贈与を行っても結局相続税は同じ」

財産が9億円あり、
相続人が配偶者と子供2人のケースを例にして、
「新相続税制」を利用して生前贈与を実行した場合と
しないままに相続を迎えた場合の相続税額を比較してみます。

新贈与を実行しない場合には、
借入金などの債務を1億円とすると、
基礎控除8千万円を差し引いた後の
7億2千万円に対し相続税がかかります。
この場合の相続税の総額は2億4,300万円ですが、
配偶者に対する特例を最大限に活用すると
配偶者の税額軽減後の納付税額は1億2,150万円になります。

このケースで子供の1人に2億円を生前贈与し
新制度を選択したとします。
子供が支払う贈与税は、
贈与財産2億円から非課税枠の2,500万円を控除した残額に
20%の税率を乗じた3,500万円です。
(2億円−2,500万円)×20%=3,500万円

その後に贈与者である親が亡くなった場合には、
7億円の相続財産が残っているわけですが、
これに新制度を利用して
生前に贈与した財産2億円を加算して
相続税の計算を行ないますので、
相続税の課税計算上の財産額は9億円になり、
つまり、新贈与を実行しないままに
相続を迎えた場合の相続財産と同額になり、
算出される相続税の総額は2億4,300万円になります。

また、この場合にも
配偶者の税額軽減を最大限に活用した場合には
配偶者の税額軽減後の税額は1億2,150万円になりますので、
そこから生前贈与の際に支払った贈与税3,500万円を差し引いた
後の8,650万円が相続税の納付額になります。

上記のとおり、新贈与を実行した場合の税負担は、
贈与時点で支払う贈与税3,500万円と
相続税8,650万円の合計1億2,150万円であり、
実行しなかった場合の相続税1億2,150万円と同じになります。

新相続税制により贈与を実行した場合、
最終的には贈与財産を相続財産に持ち戻して相続税を計算し
精算する仕組みになっていることから、
新贈与を実行した場合と
しないままに相続を迎えた場合とで
結局のところ税負担は変わりません。

執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 壽藤里絵
監修:公認会計士 山田淳一郎


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