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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第54回 生前贈与のための新相続税制
得する新贈与の仕方「価値が増える物の新贈与が得」

相続財産が8億円あり、
相続人が配偶者と子供2人というケースを例にして
新相続税制の上手な使い方をご紹介します。
このケースで子供の1人に
2億円の財産を生前に贈与して新制度を選択したところ、
相続までにその贈与財産が倍に値上がりして
4億円になったとします。

まず贈与時における贈与について子供が支払う贈与税は、
贈与財産2億円から非課税枠の2,500万円を控除した残額に
20%の税率を乗じた3,500万円です。

(2億円−2,500万円)×20%=3,500万円

その後に贈与者である親が亡くなった場合には
6億円の相続財産が残っているわけですが、
これに新贈与を利用して
生前に贈与した財産を加算する必要があります。

加算する贈与財産の価額は
値上がりした後の相続時の価額(4億円)ではなく
贈与した時の価額(2億円)ですので、
相続税の計算上の財産は8億円になります。

この場合の相続税の総額は2億4,300万円ですが、
配偶者に対する特例を最大限に活用した場合の
配偶者の税額軽減後の税額は1億2,150万円となりますので、
そこから贈与時に支払った贈与税3,500万円を差し引いた
8,650万円が相続税の納付額になります。
つまり、新贈与を実行した場合のトータルの税負担は、
贈与時に支払う贈与税3,500万円と相続税8,650万円の合計の
1億2,150万円になります。

一方で、新贈与を実行しないまま相続が発生した場合の相続財産は、
2億円の財産が4億円に値上がりしたことから10億円となります。
この場合の相続税の総額は3億3,300万円になり、
配偶者に対する特例を最大限に活用した場合でも
配偶者の税額軽減後の税額は1億6,150万円となります。

前述の新贈与を行った場合と異なり、
値上がりした財産を相続の時点で親自身が所有しているため、
所有財産の価値が上がると相続財産が増えることになり、
その結果相続税の負担が増えます。

新贈与を利用した場合には
相続時に生前に贈与した財産を
相続財産に加算する必要がありますが、
その価額は贈与時の価額であることから
贈与後に価値が増えた分は相続税の対象となりません。
つまり、価値が上がった部分に対する相続税を節税できます。
すなわち、新贈与を利用する場合には
将来的に価値が増える財産を贈与すると得です。

執筆:税理士法人 山田&パートナーズ税理士 壽藤里絵
監修:公認会計士 山田淳一郎


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