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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第81回 生前贈与のための新相続税制
新制度を選択して成功
「同族会社、子どもは名実ともにオーナー」

ある知り合いの社長の話です。
この社長は3年前に父親を亡くされ、
当時、相続税で相当なご苦労をされたそうです。
原因は自社株。
評価額がかなり高額で、
しかも100%近い株式を創業者である父親が
所有しておられました。

亡くなられた先代社長は齢88歳。
現社長が会社を継いでから佑に20年が経過しています。
会社を興した先代の力は
確かに大きかったかもしれませんが、
この20年間は現社長の頑張りで事業を拡大、
会社を発展させてきました。
会社の自己資本(純資産)も20年前と比べ
3倍近くになっています。

この会社を知っている私からみれば、
株価のうち少なくとも半分以上は
現社長の貢献によるもの、
20年前の株価は
相続時の半分以下しかしなかった、と思うのです。

社長交代した後、
先代から株式を譲ってもらうことは
考えなかったのかと社長に尋ねましたら、
先代も了承してくれたし、
何度か検討はしたが
贈与税のことを考え断念せざるを得なかった、とのこと。

未上場の自社株(取引相場のない株式)は、
優良な会社の場合、相続税の評価は意外と高く、
ときに社長自身が驚くほど高額になることがあります。
しかしながら、未上場の株式を買ってくれる人は
普通はいませんので、
換金処分することができません。

ご案内のように、
通常の贈与税の累進税率はたいへんな急カーブです。
基礎控除(年間110万円)後の課税価格が
1000万円を超えると最高税率50%に達します。
このような制度のもと、
換金処分できない自社株を大量に贈与することは
極めて難しいことです。

20年前、会社をこれだけ伸ばせることがわかっていれば、
無理をしてでも株式を移転したかもしれません。
しかし、会社は生き物ですから、
失敗する可能性も当然あるわけで、
高い贈与税を負担してまで
株式移転を実行できるオーナーは
ほとんどいないと思います。

今回の生前贈与の新制度が
もっと早くにできていたら、
社長もきっとこの制度を利用していたに違いありません。

執筆:税理士法人山田&パートナーズ 税理士 佐伯草一
監修:公認会計士 山田淳一郎


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