プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第87回 生前贈与のための新相続税制
新制度を選択して失敗
「マイホーム購入、でも引渡しが遅れた」

マイホーム取得のために親から贈与を受けた資金は、
新制度の2,500万円に1,000万円を加えた
3,500万円まで贈与税が非課税となります
(以下「新制度の特例」といいます)。

この新制度の特例には、
「贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅等の取得をして、
居住の用に供すること
又は居住の用に供することが確実と見込まれること」
という適用要件があります。

ところが、住宅の建築が予定よりも遅れ
上記の要件が満たせなくなる事態も起こり得ます。
この場合、新築家屋では
屋根を有する状態まで完成していれば
「住宅等の取得」に準じて取扱われますが、
建売住宅や分譲マンションでは
たとえ屋根を有する状態にまでなっていたとしても、
その引渡しを受けていない限りは
「住宅等の取得」として認められません。

したがって、建売住宅や分譲マンションの
工期スケジュールが遅延した場合には、
親から贈与を受けた資金について、
新制度の特例が適用できなくなるおそれがあります。
そして、特例の適用が認められないことになりますと
多額の贈与税をすぐに支払う必要が生じます。

例をあげてご説明しましょう。
マイホーム取得資金3,000万円を
子供が親から贈与を受けました。
新制度の特例を適用すれば、
3,500万円まで贈与税が非課税ですから
一切贈与税はかかりません。
ところが、「住宅等の取得」の要件を
満たせなかった場合には、
贈与税の取扱いは次に掲げるようになります。

1.親が65歳以上の場合
  「3,500万円の新制度の特例」は適用できませんが、
  「2,500万円の新制度」は適用できます
  (贈与を受けた年の翌年3月15日までに
   相続時精算課税選択届出書を提出している場合)。
  この場合、2,500万円の非課税枠を超える
  500万円について20%の贈与税、
  すなわち100万円が課税されます。

2.親が65歳未満の場合
  「3,500万円の新制度の特例」及び
  「2,500万円の新制度」のいずれも適用できません。
  また、「1,500万円までマイホーム取得資金の贈与税が
  軽減される旧制度」も、
  新制度の特例と同様「住宅等の取得」の要件がありますので
  適用できません。
  したがって、この場合には原則の贈与税制で計算しますので、
  贈与税が1,220万円もかかってしまいます。

このように、建設業者の事情等
自分で管理できない理由によって
多額の贈与税を支払う事態も起こり得ます。
もし、「住宅等の取得」の要件を満たせないと予想される場合は、
契約に伴う頭金は自己資金や借入金等で賄っておき、
引渡しの際の決済資金を贈与資金で賄うようにすればよい、
つまり確実に住宅の引渡しが受けられる年に
新制度の贈与を受けるようにすればよいわけです。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 鈴木寛
監修:公認会計士 山田淳一郎


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