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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第86回 生前贈与のための新相続税制
新制度を選択して失敗
「贈与税申告書、翌年3月15日までの提出を忘れた」

新制度は、上手に活用すれば非常に使い勝手がよい反面、
いろいろ注意・検討しないと
思わぬところでトラブルが生じます。

新制度を適用する場合には、
従来方式の贈与に比べて
贈与財産も多額になるケースが多く、
その影響も大きくなりますので注意する必要があります。
そこで、今回から4回にわたり
新制度について想定される失敗のケースをご紹介します。

親から贈与を受けた財産につき
新制度を適用しようとする場合には、
子供は贈与を受けた年の翌年2月1日から
3月15日までの期間に
「相続時精算課税選択届出書」を、
贈与を受けた子供の戸籍抄本や
贈与した親の住民票などの書類を添付して
税務署に提出する必要があります。

もし、この期間に「相続時精算課税選択届出書」を
税務署に提出しなかった場合には、
いかなる理由があっても
その贈与については新制度の適用が認められず、
原則の贈与税制(基礎控除額110万円の制度)を
適用するものしてと取り扱われます
(勿論その翌年の贈与から新制度に移行することはできます)。
その結果、多額の贈与税を
すぐに支払わなければならないという不測の事態が生じます。

例をあげてご説明しましょう。
新制度を適用するつもりで
現金2,500万円を子供が親から贈与を受けたとします。
新制度を適用すれば、
2,500万円までの贈与については
贈与税が非課税ですので一切贈与税はかかりません。

ところが、「相続時精算課税選択届出書」の提出を忘れて
新制度が適用できないことになると、
原則の贈与税制(基礎控除額110万円の制度)で計算した
贈与税がかかることになり、
贈与税額は970万円にもなってしまいます。
しかも、贈与税の納付期限
(贈与年の翌年3月15日)の翌日から
970万円を納税するまでの期間に対して
更に延滞税がかかります。

このように、書類1枚の提出を忘れただけで
新制度が適用できないことになるばかりか、
払うつもりのなかった多額の贈与税を
支払うことになってしまいます。
「ついうっかりしていた」ではすまない問題ですので
十分ご注意ください。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 鈴木寛
監修:公認会計士 山田淳一郎


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