プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第107回 生前贈与のための新相続税制−中級編
父に相続発生
兄弟が新制度で贈与を受けていたか内容不明(兄弟仲悪し)

ある一家の父親が亡くなりました。
相続人は長男と次男の2人です。
兄の方は生前に新制度を利用して
父から贈与を受けていましたので、
「もしかしたら、弟も?」と思っています。

しかし、ここ数年弟とは兄弟仲が悪く、
生前に父から財産をもらったかどうか、
ましてやいくらもらったかを
弟に尋ねることはできそうもありませんし、
尋ねたところで素直に教えてくれるとも思えません。
とはいえ、新制度を利用した生前贈与財産は
相続財産に加算する必要があるため、
弟が新制度の適用を受けていた場合には
その贈与財産額がわからないと
相続税の計算ができません。

平成15年度の税制改正により、
上記のような場合には、
相続や新制度を利用して財産を取得した人は
他の相続人等が
被相続人から新制度を利用して受けた贈与について
贈与税の申告書に記載された
贈与財産の価格を開示するよう
被相続人の所轄税務署長に対し
請求できるようになりました。

なお、この開示請求はあくまでも
相続税の申告に必要な場合に限り認められるのであって、
上記のケースで父親が健在であるうちに
弟への贈与について開示請求することはできません。

ところで、税金の話から少し逸れますが、
新制度を利用した贈与は
贈与者が亡くなった際には
相続財産に加算されることによって
他の相続人に知れますし、
仮に隠そうとしても
前述の開示請求制度がありますから
隠しておくことはできません。

言い方を変えると、新制度を使うと
過去の贈与の事実は知れるところとなります。
当然、その贈与財産を考慮した上で
遺産分割協議をすべきだとか、
遺留分(第77回参照)が侵害されている、
と主張する相続人が現れることは十分考えられ、
新制度を利用したことにより
相続争いになる可能性もあります。

新制度の利用にあたっては、
将来争いの原因とならないよう
遺産分割の全体像を考えながら
実行する必要があります。

執筆:税理士法人山田&パートナーズ 税理士 壽藤里絵
監修:公認会計士 山田淳一郎


←前回記事へ 2004年3月26日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ