第142回
発展余地はまだ大きいセメント業界
上期決算で大幅増益を計上した
セメントメーカーの見通しを再度、検証してみましょう。
2011年の1−9月におけるセメント生産量は
前年同期比18.1%増の15億1300万トン。
高止まりしている石炭価格が生産コストを
押し上げる要因となっているものの、
インフラ投資の加速にともなう需要増や
販売価格の持ち直しを受けて、
各メーカーの収益構造は改善に向かいつつあります。
同期のセメントメーカーのトータル純利益は
146.5%増の649億1600万元でした。
保障性住宅(政府が低中所得世帯に提供する廉価住宅)
などを中心に堅調の需要が望めるほか、
老朽化した生産プラントの閉鎖の加速などを受けて、
今後もバランスはややタイトな状況が続きそうです。
新型乾式セメント生産ラインの設置比率の引き上げ、
単位生産量当たりの原材料・エネルギー消費量の制限、
など盛り込んだ「セメント業界への参入条件」が
工信部から発表・実施され、
業界への新規参入は事実上ほぼ不可能になったことも
この傾向に拍車を掛けるでしょう。
今後は大手メーカーによる寡占が進むと予想されます。
エリアごとの見通しは以下のようになっています。
☆華東エリア
(上海市、江蘇省、浙江省、山東省など):
基本的に需要は旺盛。企業密集度が高く、
大手による寡占が進んでいるため、販売価格も安定。
<関連企業>
『海螺セメント』(00914)、
『中国建材』(03323)、『山水セメント』(00691)
☆華北エリア
(河北省、山西省、内モンゴル自治区、北京市、天津市など):
需給バランスはタイトで販売価格も安定している。
<関連企業>
『北京金隅』(02009)
☆北西エリア
(陝西省、甘粛省、青海省、
寧夏回族自治区、新疆ウイグル自治区など):
企業密集度は比較的高く、インフラ建設を中心に需要も旺盛。
生産効率の低い、中小プラントの閉鎖が進んでいることも、
大手メーカーに追い風。
<関連企業>
『中国中材』(01893)
☆西南エリア
(雲南省、貴州省、四川省、重慶市など):
産業密集度が低いうえに、豪雨による洪水災害後、
多くの生産プラントが稼働したため、
現在は供給量が需要を上回る状況が続いている。
(次回に続く)
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