新入生、荒木尊史さんのQさん経営学実践奮闘記

第33回
言わない人は損をする

中国では“言わないと損をする”という概念が根付いています。
タクシーに乗っても、買い物をしても、
ビジネスの交渉でもすべてにおいてこの傾向は見られます。

赴任当初は、
この習慣をキチンと理解していなかったが為に、
酷く苦労しました。
多くの社員が「相談がある」と、個別に私の元を訪れます。
相談内容の多くは、業務の改善案というよりは、
社員自身の生活改善案だったのですが、
これも疎かにはできないことです。
例えば
「寮にクーラーが無いので、夜眠れず業務に支障をきたす」
という検討の余地のあるものから、
はたまた
「最近の社員食堂の料理がまずいので、
賄代として現金で支給してほしい」
「家を買いたいからお金を貸してほしい」
という身勝手なものまで色々とありましたが、
私を悩ませたのは内容よりも、その数です。
物は試しとばかりに、次から次に相談にやって来るのです。

これには完全に参ってしまい、
生活環境などの改善要望については
すべて人事部を通すようにとの通達を出し、
何とか落ち着きを取り戻しました。
部下の意見になんでもかんでも耳を傾けていたのでは、
時間がいくらあっても足りませんし、
それが風通しの良い会社と言うわけではありません。
中国には“言わない人は損をする”といった考え方が
広くあるように思われます。
そこをしっかりと理解していれば、
イライラすることもなくなります。
お互いに文化の違いがわかってくれば、
不思議と自然に上手くいくものです。

以前、日本に留学していた中国人が、
他の中国人に次のようなことを話し、
本当か?信じられないと皆で笑っていたことを思い出しました。
留学中のある夜、自宅に帰ってふと思い返してみると、
その日しゃべった言葉が
「ラーメン定食を1つください」だけだったと。
私としては、ありそうな話なので
別に不思議でも何ともないのですが、
おしゃべり好きな中国人にとっては、
自己主張しない、知らない人には話し掛けない
日本人の大人しさが理解できないのかもしれません。


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2007年5月12日(土)

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