日中を股に賭けるビジネスマン・千葉鴻儀さんが見た光と影

第32回
天津人

「北京には官僚が多い、天津には商人が多い」というのは、
人々が北京と天津の近隣二大都市に対するイメージです。
天津は五大河川の集結部にあり、
華北の重要な交通要塞のため、
国内外から様々な人種と文化が雑居しています。
東西文化の混合と摩擦を背負いながら
競争意識と実務精神の強い天津商人が誕生しました。
天津商魂には農耕文明と工業文明、
東洋文明と西洋文明の融合が見られます。

その特徴としては
(1)実務を重んじる努力家
(2)科学を重視する技術派
(3)利益を重んじるが約束も守る堅実派

などがあります。

天津人は商品の名前や宣伝よりも、
まず商品の品質を考えているようです。
独創の発想で他人のない商品を作り、
顧客に対する信用を守りきる天津人は
ほかの地方の人からばかされるほどこだわりがあります。
まだ市場経済が中国で芽生えた頃、
天津のある百貨店は率先して
「顧客が全て、品質が全て」という経営理念を打ち出し、
中国で初めて「七試用一交換」という
前例のない商品保証制度を実行しました。
ほとんどの商品は7日間試用でき、且つ満足がいかない場合、
交換や払い戻しを保証するという仕組みです。
このようなサービス精神は
北京では決して見ることができないでしょう。
商売熱心の広東でも
「商品をよく確認してください。
商品を購入し店を出たら一切交換や払い戻しができません」
と目立つところに看板を出した店がほとんどです。

古都北京に近いこともあり、儒教文化に強く影響されたせいか、
慎重且つ賢い天津商人は東北人のような荒っぽさがなく、
南方商人のずる賢さがなく、上海商人の功利主義も余りありません。
商人であり実業家でもある天津商人は
政治の中心と隣り合わせながら、
政治と距離を置くことに気を配っています。
国民党時代に蒋介石政府から
政府要職への就任が数回オファーされたにもかかわらず、
天津出身の実業家、範旭東さんは固辞した話は歴史的にも有名です。

一方、日本のソフト会社の天津現法で製造しているゲームソフトが
侵略戦争を美化するような内容が入っていることが見つかり、
天津の中国人社員に告発され、
生産停止に追い込まれる話も有名です。

政治に関心はありませんが、原則をきちんと守り、
利益のために原則まで失うことは決してしないのは
天津人の典型と言えましょう。


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2006年7月28日(金)

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