日中を股に賭けるビジネスマン・千葉鴻儀さんが見た光と影

第38回
山西人

最近、実在の近代山西商人を描いたテレビドラマ
「喬家大院」が中国で人気を呼んでいます。
清王朝の激動の時代とともに
中国全土を駆け巡り物流と金融のネットワークを広げた
喬氏家族の物語でした。

喬氏家族と同じように山西商人の多くは裸一貫の起業家です。
持ち前の勤勉、節約、忍耐力と冒険心で各地へ行商し
成功を掴みました。
昔から山西には山が多く、土地が貧弱でした。
厳しい生存環境を生き抜くために、
山西人は故郷を遠く離れ、外で活路を求めてきました。
他人より「勤勉、節約、忍耐力と冒険心」を持たなければ、
成功することは不可能です。
「勤勉、節約、忍耐力と冒険心」は山西人の美徳と言われています。
山西商人はこの美徳で商売を中国各地に広げ、
さらに世界へ広げました。
「すずめの飛べるところにはわが山西人がいる」
と、山西人が誇っていました。

もちろん、勤勉と節約だけでは商売を大きくすることができません。
山西商人は信用を以って
物流チェーンと金融ネットワークを構築し
商売を拡大させてきました。
前出の喬氏家族は一時的な利益を追わず
商品の品質と信用を大事にしてきました。
喬氏経営の「複盛公商店」のある支店長は、
利益を出すために胡麻油に別のものを混ぜました。
それに気づいた社長は、すぐお客さんに賠償金を払った上、
本物の胡麻油に取りかえらせました。
この姿勢はお客さんに評価され、大きな信用につながりました。
「複盛公商店」が100年以上も続きました。

山西人は経営に長けています。
近代中国商業と金融業の礎を作ったのは山西人
と言っても過言ではありません。
株式制の経営方法や社員持ち株制度、
キャッシュフロー経営などの手法を
山西商人が昔から取り入れています。
単にものの売買にとどまらず、
資金の最大限の有効利用に常に気を配った山西商人は
「票号」と言った手形融資の金融機関を作りました。
当時、山西「票号」のネットワークと信用は
中国最強を誇っていました。
また、情報への敏感と機敏な対応に得意としている山西商人は
「官」との関係作りにも腐心しており、
商流・金流・情報ネットワークに
政府のサポートまで取り付けた山西商人は
中国一の商人と言われるまで成長しました。
現代では、山西商人の影響力が落ちていますが、
山西人は昔の美徳を捨てていません。
いずれ中国経済を牛耳る日が来るかもしれません。


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2006年8月25日(金)

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