日中を股に賭けるビジネスマン・千葉鴻儀さんが見た光と影

第51回
寧波人

前回では商売の下手な杭州人の話をしましたが、
今回から同じく浙江省にいながら、
中国の経済界および海外で大活躍し、
ビジネスで成功している
寧波人と温州人のお話をしていきたいと思います。

寧波人は故郷にこだわる意識が薄いです。
海に面しているせいか、
寧波人は生まれつきの冒険家で
19世紀末および20世紀40年代に大規模の移民ブームを起こし、
日本や欧米に移住し異国で創業を果たしました。
統計によれば、香港、マカオと台湾を含めると、
現在海外にいる寧波人は約10万人、世界50カ国にも点在しています。

海外で巨富を築いた寧波人は少なくありません。
香港商船業界の二大企業のオーナーはいずれも寧波人です。
一人は船139隻、
世界7位の1200万トンの積載量を誇る董浩雲氏です。
その子息は香港返還後の初代行政長官まで昇りつめた董建華氏です。
もう一人は船210隻、
世界最大の2100万トンの積載量を誇る包玉剛氏です。
包氏は香港の航空会社キャセイとドラゴンにも投資しており、
香港10大財閥の一人です。
一方、国内では上海は近代寧波商人の創業の大本営です。
上海を拠点にビジネスで成功した寧波人は
中国各地に商売を広げていきます。

寧波人は他人よりも一歩先に新しい業界に進出し
成功を収めるのが得意のようです。
リスクを恐れず、挑戦し続けるのは寧波人のスピリットです。
ほかの地方の人はいざ成功すれば、
すぐ不動産を買ったりして守りの体制に入りますが、
寧波商人は商業で成功したと思えば、
次は大金を投げて実業を進出するといった具合です。
寧波人は情報に敏感です。
従来の枠組みにとらわれず、経営戦略を柔軟に変えて行きます。
「信用」と「誠実」は寧波商人の経営理念です。
顧客中心の発想も寧波商人を成功に導いていきます。

寧波商人は冒険が好きですが、決して無駄な冒険はしないです。
寧波商人は果敢に投資しますが、投機的なビジネスを嫌っています。
前出の包氏の座右の銘は
「儲けは少なくても無駄なリスクを負って利を追求しない」
だそうです。
彼の口癖は
「僕は銀行マン出身です。ギャンブラーではありません」
と聞いております。
寧波商人はリスクの中で堅実経営を求めています。
利益追求を経営の最大の尺度とせず、
儲けを少なくしても予測可能なリスクを減らしていきます。
このように目先の利益に左右されない経営思想は
寧波商人を成功させています。
寧波商人は優良なビジネスパートナーと言えるでしょう。


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2006年10月13日(金)

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