日中を股に賭けるビジネスマン・千葉鴻儀さんが見た光と影

第61回
江西人

歴史上、すすんで商売の道へ進める江西人はほぼ皆無と言えます。
大まかに言えば、
商売人になった江西人は三種類に分かれることができます。
土地を失った貧しい農民はその大半で、
それ以外は科挙試験に失敗し
官僚への道を断たれた人たちと
先祖の事業を後継ぎした人たちでした。
やむを得ず商売を始めさせられた江西人は
心の奥には商売人が誇りの持てる職業と思っておらず、
あくまでも生計を立てるための手段と考える傾向がありました。
このような考え方はいまも江西人を影響し続けています。
江西商人は総じて言えば、
文化的な素質が高くありませんが、
忍耐力と苦労を恐れない実務家の精神は人並み以上でした。
ただビジネスに対する古い観念の枠組みから脱出できないため、
成功した江西商人は少なかったのです。

利益追求と蓄財は商人の本性と言われていますが、
多くの江西商人はその例外と言えます。
昔、ある江西商人の熊琴氏は商売で大成功しましたが、
毎日良く眠れませんでした。
喜びのためではなく金銭に対する恐怖のためでした。
熊氏は子孫に対し
「衣食住に困らなければ十分だ。蓄財をしてはいけない。
蓄財は怨恨を招く。金を使うときはとことん使いなさい」
と常々訓示していたそうです。
江西商人には巨富の事業家が少ない理由は金銭欲が薄く、
蓄財と利殖の意識がないことにあると思われています。
金儲けのできた江西商人は
まず家計の改善や親族の援助に金を回し、
その次はお寺や道路などの
名声を稼ぐための社会インフラに金を使い、
最後には生産の再拡大に投資するパターンがあります。

江西商人は個人経営が殆どです。
歴史上、江西商人の家庭は、
奥さんが農地に汗を流し、
ご主人が商売に励むといった形を取っていました。
江西商人は家族経営にこだわりがあります。

江西省は内陸部にあり、資源が豊富ですが、
周りに山が多く従来交通の便が悪かったのです。
そのため、福建省や広東省みたいに外的文明の影響が弱く、
儒教の伝統文化が深く江西人の意識に根ざしています。
したがって、「誠実」、「信義」は
江西商人にとってごく当たり前のことと言えるでしょう。


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2006年11月17日(金)

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