第5回
導引練習は体内環境から整える その2

体内環境は誰もがみな同じというわけではありません。
生活環境や社会環境、それから自分自身の体質や性格、
精神状態などの特性によって形成された体内環境は、
その人固有のものでありさまざまです。

漢方医学理論では、
体内環境の状態を「陰・陽・寒・熱・虚・実」の
6つのタイプにまとめて認識しています。
この6つのタイプは、「陰」「陽」「寒」などのように、
それぞれが独立して表現されるだけではなく、
むしろ2つあるいは3つのタイプが
組み合わされた場合の方が多く見られます。
すなわち「陰虚」タイプや「陽実」タイプ
「陰実寒」タイプや「陽虚熱」タイプなど
というように表現されます。
更に「気血」にも関連づけて分類すれば、
「気陰虚」「血寒」「血熱」「気血虚」などのような
種類があります。

このように皆が独自の体内環境を持っているわけですが、
漢方医学ではさらに
「健康な体内環境というものは存在せず、
病気になりやすい状態(病気になる可能性)を
常に抱えているのが体内環境だ」というように考えます。
漢方医学による理想的な健康状態とは、
一言でいうと『陰平陽秘』です。

室内環境については、部屋の構造が頑丈でないと住めない、
室内空気や室温が適当でないと住めない、
ということは皆さんも理解できると思います。
人間の体内環境も室内環境と似ていて、
良い体内環境がないと健康状態にはなれません。
良い体内環境とは漢方医学理論でいう
陰陽バランスが良好な状態のことです。
陰陽バランスが良い状態とは、
陰と陽の量や質を均等にすることではなく、
『陰』の状態も良く『陽』の状態も良いという状態をいいます。

ここで体内環境についての陰陽概念を少し説明します。
まず、体の『陰』に属するものは
各器官、組織、系統などの具体的、物質的なものです。
次に、体の『陽』に属するものは
各器官、組織、系統などの働く機能です。
つまり『陰』の良い状態とは
器官・組織・系統は形、位置、数量などの異常がない状態で、
平常の状態です。

また、良い『陽』の状態とは
器官・組織・系統の働き機能が
強くもしない弱くもしない状態で、
正常状態を維持する状態です。
このような状態が漢方医学理論でいう
『陰平陽秘』の理想的な健康状態です。
導引練習では体内環境を
『陰平陽秘』にするために調心・調息・調身を行います。


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