第52回
養生とは精気神を養うことだ−「精」

現代における病気予防や健康維持といえば、
おそらく体脂肪や血脂、血圧などの
直感的で分かりやすいデータに注目し、
それらのデータ数字に基づいて
毎日の飲食管理や運動練習を調節し、
コントロールしていくことになるだろうと思います。

では、中国の伝統的な養生の場合は
どのように考えるのでしょうか。
養生では「精」「気」「神」という
三つのものを中心に保養することを考えます。
歴代の養生専門家によれば、
これら精気神は“人身三宝”と言われています。
そこで今回は
この人身三宝をひとつずつ紹介しようと思います。

まず、「精」についてお話します。
「精」をひとことで説明すれば、
人体構成及び人体発育成長の基礎物質であるといえます。

『黄帝内経』の中には
人体形成の段階が順を追って記載されています。
それは「人体が形成される順は、
精ができ始めた後に脳と髄ができ、
その後、骨ができ、人体の基本構造が作られる。
その後、経脈ができ、栄養運送の道となる。
その後、筋ができ、人体の動きを可能にする構造になる。
その後、肉ができ、体の墻(カキ)とする。
その後、皮膚ができ、毛髪が成長する」というものです。

この文章で述べている「精」は生殖の精で、
もう一つの呼び方は「先天の精」です。
これは親の生殖の精を合わせてから胎になり、
徐々に発展し完成した人体となることを説明したものです。

また、先天の精とは逆に
「後天の精」と呼ばれる精もあります。
後天の精は飲食の形で吸収されるもので、
命を維持するためには不可欠なものです。
古典本の中では「水穀之精」とも呼ばれています。
これは現代でいう
身体必須の栄養物質というものに類似しています。

このように「精」が生命の根本だという言葉が
『黄帝内経』にもあるのですから、
養生は「精」を養うことを大事にしなければなりません。


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