第37回
インド・ビジネス2011年回顧と2012年の展望(2)
2011年のルピーの下げは
ユーロ危機の影響を受けたことが大きく、
主因は手元資金確保のため欧州の投資家、
とりわけ英国勢がインドの社債、
株式を大量に売却したことによるものです。
ウォールストリート・ジャーナル、12月6日号では、
「もし通貨下落に歯止めがかからなければ
インドは過去十年で最悪の経済危機に直面するだろう」
と指摘しています。
スズキはインドルピーの下落で
営業利益が44億円目減りするなど、
すでに進出している企業は、
ルピーの下落では大きな痛手を被りました。
2012年を展望すると、
欧州危機は悪化の方向とする予測が多いようですので、
そうならインドの経済成長の頭を抑えることになるでしょう。
一方、ルピー相場の点からは、
今はインド進出の絶好機とも言えるでしょう。
インド政府は貧困の撲滅のためには経済成長を必要としており、
ルピー安や小売の規制緩和が進めば、
インドへの投資は一層拡大し、成長を促すでしょう。
またルピー相場はインドからの輸出もサポートしますので、
インドの輸出拠点化が進むでしょう。
2011年に起きたタイの洪水では、
日産がタイからの輸出減少分をインドからの輸出で補いました。
2011年は東北大震災やタイの洪水など、
サプライチェーンの問題が繰り返し浮き彫りになりました。
そのためリスク分散の観点からも、
インドの拠点は見直されることになるでしょう。
またすでにインドに進出した企業は、
稼いだルピーの持ち出しはしにくい状況ですので、
2012年はインド国内での再投資、特にこれまで手薄だった
第2級都市や地方農村部への販売網拡大が加速しそうです。
インド企業にとっては、
欧州への輸出は引き続き減速せざるを得ないでしょうから、
アジア、中でも円高の日本への輸出に力を入れてくる
可能性があります。
一方で、ルピー安や、欧米の金融緩和の流れから
商品価格の上昇は当面続くでしょうが、
一方でインドの物価はそろそろピークアウトするだろうと
予測しているエコノミストもいます。
2012年のインド経済は、物価動向に引き続き注意が必要で、
中銀の金融政策が鍵を握ることになりそうです。 |