第45回
どの株を買うかを証券会社の人に聞いてはいけない
株の手ほどきは誰にやってもらうのがいいのだろうか。
一番いいのは、たぶん身内の者か、親しい友人であろう。
反対に一番いけないのは、証券会社のセールスマンであろう。
身内や友達がいいのは、
軍師として優れているかどうかはともかくとして、
少なくとも他意はないからである。
証券会社がいけないのは、
一つは、証券会社の人なら
毎日株を扱っているから相場に精通しているだろうと、
こちらがつい気を許し、頼りすぎてしまうからである。
もうーつは証券会社の場合は、
セールスマンにノルマがあって、
自分の成績を上げるため激しく売買をさせようとするからである。
株のことを何も知らない人から見れば、
何十年も証券会社に勤めてきた人は、
株の大ベテランに見える。
しかし、株式市場のすぐそばで仕事をしているということと、
相場の先が見通せるかどうかはまた別のことである。
『日本永代蔵』の中で、
井原西鶴は難波で千両箱をつくっている人の話を書いている。
千両箱をつくっている人は、
一生、千両箱をつくり続けているが、
ついに中身にお目にかかったことはないそうである。
証券会社に勤めている人も、大半が似たようなものである。
もし証券会社のセールスマンが相場に精通していたら、
たぶん彼は証券会社に勤めたりしないで、
お客の側に回っていただろう。
彼がカウンターの向こう側に座って安月給に甘んじ、
株が大暴落したのは自分の不見識によるものでも何でもないのに、
お客にへいこら頭を下げて、
「この次はお客さまのご損にならないよう
一生懸命頑張りますから」
と割に合わないことを言うのは、
相場のことを知らない何よりの証拠であろう。
そういうセールスマンに
「どんな株を買えばよろしいのでしょうか」と聞くのは、
知らない土地に行って、
自分と同じ旅行者に道を聞いているようなもので、
その結果、買った株が下がってがっかりしたり、
怒ったりする人があるが、
それは聞く方が間違っていると言っていいだろう。
もうーつ、証券会社のセールスマンも、
しょせんはサラリーマンで、
会社の方針に従わないわけにはいかない。
証券会社はどこまでも業績を上げるために、
セールスマンにノルマを課している。
また次は、どこの株をお客に買わせようとか、
どういう転換社債や国債を売り出そうか
といった基本方針を打ち出してくる。
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