目標は「中金」持ち!

第148回
お金はなくとも、しあわせで充実した人生を送る方がいい その2

お金持ちになれば、お金の効用は低減する。
ならば、豊かな社会は嫉妬のない、
平和な社会になりそうなものである。

ところが、豊かになればなるほど嫉妬心は煽られ、
人が成功したり、金持ちになったりすると、
それだけで酸っぱい葡萄を噛んだ気持ちになる人が増える。

よく考えてみれば、
他人の家の屋根瓦が黄金で敷きつめられようと、
自分の家の屋根が雨漏りするわけではない。
にもかかわらず他人の家の屋根瓦がキラキラと輝いただけで、
もう胸の中がおさまらなくなる人が多いのである。

人のふしあわせを手を叩いて喜ぶ人の多い世の中で、
しあわせになろうと思ったら、
ゆめゆめ大金持ちになろうと思ってはいけない。
なろうと思ってもそう簡単になれるものではないが、
もし万一、間違って大金持ちになったとしたら、
貧乏人のふりをしなければならない。
それがいまの世の中を平穏無事に生き延びる、
多分、唯一の処世術である。

どうせ大金持ちになろうと思ってもなれないのだし、
お金持ちになって禍いが天から降ってくるだけだから、
いっそ大金持ちになろうなどと思わないことである。
大金持ちになっても物質的な享楽は
中金持ちとさほど変わらないし、
金のある人ほどお金儲けに忙しくて
お金を使うチャンスがないから、
お金を持っている意味がない。
そういう孤独で空疎な人生を送るよりは、
お金がなくともしあわせで充実した人生を送る方が絶対にいい。

私は多くの金持ちをすぐ近くで観察しているが、
お金を持っている人ほど心配事が多くて、
いつも頭を悩ましている。

それでいて持っているお金を使うわけではないし、
使ったとしてもとても使いきれるものではない。
そういうお金なら持っていないのと大して変わりはない。

お金をたくさん持っているより、
お金を上手にコントロールできる人の方が、
「人生の達人」であることは間違いない。


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2014年11月6日(水)更新
- このコラムは月・水・金の発行です -

11月8日  第1回 まえがき

11月11日  第2回 日本人のお金の扱い方には特徴がある
11月13日  第3回 日本人の金銭観を象徴する言葉「欲とニ人連れ」 11月15日  第4回 本当の教科書は過去の文献でなく、現に起こっている現象
11月18日  第5回 クロウトの固定観念よりシロウトの新鮮な発想 11月20日  第6回 お金の扱い方にもノウハウがある
11月22日  第7回 豊かな社会では、お金の話だけでは心に響かない
11月25日  第8回 お金は形があるようで形がなく、形がないようで形がある
11月27日  第9回 お金の性格の第一は「金銭無情」 11月29日  第10回 ケチと節約は、共にお金を使わないようにする行為
12月02日  第11回 ケチと節約は、共にお金を使わないようにする行為

12月04日  第12回 若いときのケチは愛嬌があって頼もしい

12月06日  第13回 人と人を結びつけるものはお金である 12月09日  第14回 メシの種を提供すれば、人はいくらでも集まってくる
12月11日  第15回 メシの種を提供すれば、人はいくらでも集まってくる 12月13日  第16回 財産の「財」という字は、お金についての才能のこと
12月16日  第17回 お金を大事にしなければ金持ちにはなれない 12月18日  第18回 10万石といえども、もとは一粒
12月20日  第19回 二十代の経験を三十代に生かせれば、確実にお金が貯まる 12月23日  第20回 貯蓄十両、儲け百両、見切り千両、無欲万両
12月25日  第21回 貯蓄の目的をはっきりさせないと腰くだけに 12月27日  第22回 二十代、三十代の貯蓄が中年からのゆとりを生む
12月30日  第23回 銀行は現金の一時預かり所 01月01日  第24回 日本で「仕事を選ぶ」とは、会社に入ること
01月03日  第25回 豊かな社会では、お金の追求よりしあわせを優先させるべし 01月06日  第26回 サラリーマン社会ではプ口とアマの区別があいまい
01月08日  第27回 他流試合で通用するプ口になるのが当面の目標 01月10日  第28回 結婚は人生最大の賭け
01月13日  第29回 嫁に持つなら青鬼より赤鬼がいい 01月15日  第30回 夫に選ぶなら勇気があって楽天家を
01月17日  第31回 自分の貴人は自分で探せ その2 01月20日  第32回 自分の貴人は自分で探せ その2
01月22日  第33回 自分の貴人は自分で探せ その3 01月24日  第34回 退職金は老後に必要なお金の三分の一しかもらえない
01月27日  第35回 定年を四十歳にして、その後の人生は自分で決める 01月29日  第36回 四十歳で始めた仕事は、人生後半を生きるための仕事
01月31日  第37回 定期預金をして金持ちになった人はいない 02月03日  第38回 時代に適応できなければ消え去るのみ
02月05日  第39回 利息よりも、働いて収入を得るかお金に稼いでもらうかが本筋 02月07日  第40回 未来に思いをいたして次の手を打つ
02月10日  第41回 株も不動産もうんと下がったときが買い 02月12日  第42回 若いときの財テク道楽が身を助ける
02月14日  第43回 株式投資は船旅のようなもの 02月17日  第44回 たとえ千株でも株を持てば、世間を見る目が違ってくる
02月19日  第45回 どの株を買うかを証券会社の人に聞いてはいけない その1 02月21日  第46回 どの株を買うかを証券会社の人に聞いてはいけない その2
02月23日  第47回 損をしても自分で責任をとる方が上達する 02月25日  第48回 株は自己資金の範囲内でやらなければならない
02月28日  第49回 波の高低を見るな、潮の流れに乗れ

03月03日  第50回 ナンピン買いは自信と勇気のある人の特権

03月05日  第51回 株は売った後に高くなる その1 03月07日  第52回 株は売った後に高くなる その2
03月10日  第53回 株が高くなってからガマンするのが本当の辛抱 03月12日  第54回 株は職業としては成り立たない
03月14日  第55回 財産三分法は安全に重きを置いている 03月17日  第56回 ロケーションのいいマンションは空室にならない
03月19日  第57回 採算を無視した投資はどこかでつまずく 03月21日  第58回 採算を無視した投資はどこかでつまずく その2
03月24日  第59回 銀行金利の払えない借金はしない 03月26日  第60回 銀行金利の払えない借金はしない その2
03月28日  第61回 利回り5〜6パーセントのマンションは手堅い投資対象 03月31日  第62回 利回り5〜6パーセントのマンションは手堅い投資対象
04月02日  第63回 財産三分法も国際化の時代に入ってきた 04月04日  第64回 よそ者の方がチャンスをつかめる その1
04月07日  第65回 よそ者の方がチャンスをつかめる その2 04月09日  第66回 魚のうようよいるところに移った方がチャンスをつかめる
04月11日  第67回 魚のうようよいるところに移った方がチャンスをつかめる その2 04月14日  第68回 リスクを恐れるな。チャンスがあるかどうかが問題
04月16日  第69回 リスクを恐れるな。チャンスがあるかどうかが問題 その2 04月18日  第70回 通貨の強くなる発展途上国が狙い目
04月21日  第71回 通貨の強くなる発展途上国が狙い目 その2 04月23日  第72回 虎に食われないですむ対策を考えて宝の山に近づく
04月25日  第73回 危険分散のために財産の三分のーは日本に残す 04月28日  第74回 賢者は中金持ちをめざす
04月30日  第75回 賢者は中金持ちをめざす その2 05月02日  第76回 「月に百万円使える」が中金持ちの目安
05月07日  第77回 法人組織にすると必要経費が認められる 05月09日  第78回 法人組織にすると必要経費が認められる その2
5月12日  第79回 税法のもとでは中小企業の社長さんが一番の賢者 5月14日  第80回 国は大衆課税をしないと財政がもたないところまで追い込まれている
5月16日  第81回 国は大衆課税をしないと財政がもたないところまで追い込まれている その2 5月19日  第82回 茨の道に踏み込めるかどうかで、あなたの運命が決まる
5月21日  第83回 税金を支払う前のお金を使えれば効率がよい 5月23日  第84回 税金を支払う前のお金を使えれば効率がよい その2
5月26日  第85回 お客が喜んでお金を払ってくれる仕事を探す 5月28日  第86回 個人の特殊技能を発揮するか、社会のスキマを埋めるか
5月30日  第87回 これが天職と思えば全精力を傾けよ 6月02日  第88回 これが天職と思えば全精力を傾けよ その2
6月04日  第89回 決められた期日にお金を払い込まねば信用が得られない 6月06日  第90回 決められた期日にお金を払い込まねば信用が得られない その2
6月09日  第91回 時代の要求をうまくとらえられれば金持ちになる 6月11日  第92回 人の資産や収入は、学歴や教養や能力とは関係がない
6月13日  第93回 人の資産や収入は、学歴や教養や能力とは関係がない その2 6月16日  第94回 世の中にはお金の儲かる商売と儲からない商売がある
6月18日  第95回 世の中にはお金の儲かる商売と儲からない商売がある その2 6月20日  第96回 斜陽化のさなかに置かれたら脱出するほかない
6月23日  第97回 斜陽化のさなかに置かれたら脱出するほかない その2 6月25日  第98回 ピンチから立ち直るために努力したことが次の活路を開く
6月30日  第99回 お金は人のたくさん集まるところに集まる 7月02日  第100回 失敗したときのためのブレーキを踏みながら仕事を運転する
7月04日  第101回 失敗したときのためのブレーキを踏みながら仕事を運転する その2 7月07日  第102回 成功者に数えられる人はみなせっかち
7月09日  第103回 成功者に数えられる人はみなせっかち その2 7月11日  第104回 どんな時代でもシロウトが参入できるスキマがある
7月14日  第105回 どんな時代でもシロウトが参入できるスキマがある その2 7月16日  第106回 事業のパートナーは運の強い奴がいい
7月18日  第107回 事業のパートナーは運の強い奴がいい その2 7月21日  第108回 どの町でも金持ちはよそ者
7月23日  第109回 サラリーマンが準備すべきことは定年後の設計 7月25日  第110回 サラリーマンが準備すべきことは定年後の設計 その2
7月28日  第111回 サラリーマンが中金持ちに近づく道は収入の多角化 7月30日  第112回 サラリーマンが中金持ちに近づく道は収入の多角化 その2
8月01日  第113回 知識や技術や人間関係にお金を投じるのも投資 8月04日  第114回 知識や技術や人間関係にお金を投じるのも投資 その2
8月06日  第115回 生き甲斐を支える経済生活のプランを立てよう 8月08日  第116回 心の満足にお金も労力も惜しまないのが充実した人生
8月11日  第117回 充実感さえあれば、人生は生きるに値するもの

8月13日  第118回 五十歳からの脱サラにも新鮮感はある

8月15日  第119回 五十歳からの脱サラにも新鮮感はある その2 8月18日  第120回 経験が活かせる場なら、五十歳からでも再出発できる
8月20日  第121回 経験が活かせる場なら、五十歳からでも再出発できる その2 8月22日  第122回 失業はまたとない再出発のチャンス
8月25日  第123回 失業はまたとない再出発のチャンス その2 8月27日  第124回 子供にまとまったお金を与えれば計画性が養成される
8月29日  第125回 子供にまとまったお金を与えれば計画性が養成される その2 9月01日  第126回 小遣いの使い途に口を出さず、上手な使い方を身につけさせる
9月17日  第127回 親の苦労は包み隠さずに見せよ 9月19日  第128回 ファーストクラスの安い切符でお金を節約
9月21日  第129回 安いカーテンで豊かな気分を味わう 9月24日  第130回 贈り物にはニ流の時計より最高級のスリッパ
9月26日  第131回 贈り物にはニ流の時計より最高級のスリッパ その2 9月29日  第132回 お金は儲けただけでは半成品
10月01日  第133回 「お金を使う」とは、再生産過程に戻らない使い方 10月03日  第134回 ロールスロイスに乗るのは、節減の余地を残しておくため
10月06日  第135回 世界の文化はみな「成金」が作った 10月08日  第136回 世界の文化はみな「成金」が作った その2
10月10日  第137回 人生のある時期を越えたらお金を減らす算段を 10月13日  第138回 人生のある時期を越えたらお金を減らす算段を その2
10月15日  第139回 商売や投資を研究するための海外旅行も面白い 10月17日  第140回 商売や投資を研究するための海外旅行も面白い その2
10月20日  第141回 自分の方からお手伝いさんや看護人を探しに行く時代 10月22日  第142回 自分の方からお手伝いさんや看護人を探しに行く時代 その2
10月24日  第143回 年をとったら失業に追い込まれるのは自営業者も同じ 10月27日  第144回 年をとったら失業に追い込まれるのは自営業者も同じ その2
10月29日  第145回 自分の性にあった仕事を探すのが人生最後のしあわせ 10月31日  第146回 自分の性にあった仕事を探すのが人生最後のしあわせ その2
11月03日  第147回 お金はなくとも、しあわせで充実した人生を送る方がいい  


■邱 永漢 (きゅう・えいかん)
1924年台湾・台南市生まれ。1945年東京大学経済学部卒業。小説『香港』にて第34回直木賞受賞。以来、作家・経済評論家、経営コンサルタントとして幅広く活動。最期まで年間120回飛行機に乗って、東京・台北・北京・上海・成都を飛び回る超多忙な日々を送った。著書は『食は広州に在り』『中国人の思想構造』(共に中央公論新社)をはじめ、約400冊にのぼる。(詳しくは、Qさんライブラリーへ




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