第148回
お金はなくとも、しあわせで充実した人生を送る方がいい その2
お金持ちになれば、お金の効用は低減する。
ならば、豊かな社会は嫉妬のない、
平和な社会になりそうなものである。
ところが、豊かになればなるほど嫉妬心は煽られ、
人が成功したり、金持ちになったりすると、
それだけで酸っぱい葡萄を噛んだ気持ちになる人が増える。
よく考えてみれば、
他人の家の屋根瓦が黄金で敷きつめられようと、
自分の家の屋根が雨漏りするわけではない。
にもかかわらず他人の家の屋根瓦がキラキラと輝いただけで、
もう胸の中がおさまらなくなる人が多いのである。
人のふしあわせを手を叩いて喜ぶ人の多い世の中で、
しあわせになろうと思ったら、
ゆめゆめ大金持ちになろうと思ってはいけない。
なろうと思ってもそう簡単になれるものではないが、
もし万一、間違って大金持ちになったとしたら、
貧乏人のふりをしなければならない。
それがいまの世の中を平穏無事に生き延びる、
多分、唯一の処世術である。
どうせ大金持ちになろうと思ってもなれないのだし、
お金持ちになって禍いが天から降ってくるだけだから、
いっそ大金持ちになろうなどと思わないことである。
大金持ちになっても物質的な享楽は
中金持ちとさほど変わらないし、
金のある人ほどお金儲けに忙しくて
お金を使うチャンスがないから、
お金を持っている意味がない。
そういう孤独で空疎な人生を送るよりは、
お金がなくともしあわせで充実した人生を送る方が絶対にいい。
私は多くの金持ちをすぐ近くで観察しているが、
お金を持っている人ほど心配事が多くて、
いつも頭を悩ましている。
それでいて持っているお金を使うわけではないし、
使ったとしてもとても使いきれるものではない。
そういうお金なら持っていないのと大して変わりはない。
お金をたくさん持っているより、
お金を上手にコントロールできる人の方が、
「人生の達人」であることは間違いない。
新・飯の食える経済学 完結
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