“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第18回
唐墨は自家製が最高

9月の半ばから10月の上旬にかけて、
築地場内はこの時期しか出回らないものを
血眼に探す料理人が増える。
鯔子である。
これを塩漬けにして乾燥したものが唐墨だ。

唐墨は高級食品として有名だが、
築地で鯔子を買って自分で作れば、相当安くできる。
築地の鯔子の相場は八千円くらいから一万五千円くらいまである。
たまに五千円くらいのでものもあるが、
美味しい唐墨を作るには材料費はあまりけちらないほうがいい。
唐墨を作るには、まず鯔子の血抜きをする。
鯔子の表面は血管が浮いているが、
そこに針か竹串で穴を開けて、
血を血管の根元から竹串で押し流していって、血を抜く。
これが結構手間がかかる。

次に、鯔子を塩漬けにする。
この塩漬けをどの程度の時間行うかが、
唐墨作りの一つのポイントとなる。
塩漬けを何故するかというと、鯔子の生臭みを取るためである。
それ故、鯔子が臭みが多いものは塩漬けの時間が長くなる。
三日くらい塩漬けをするところが多いようだが、
最高の品質のものであれば半日で十分だ。
塩漬けが長すぎると旨みも一緒に抽出してしまうので、
いい鯔子を短時間塩漬けするのが理想だ。

塩漬けを終えて、塩抜きを行う。
塩を洗ってから日本酒に塩漬けと同じ時間だけ漬けておく。
私は塩抜きの最後の段階で、
さらに焼酎で鯔子を洗うようにしている。
こうすると黴が生えにくいのと、味に輪郭がでてくる。
塩抜きを終えたら、鯔子を干す。
通常はアクリルの板で挟んでゴム輪で圧力をかけたりして、
固い唐墨を作る。
私は圧力をあまりかけない方法で、
卵の小さい粒粒が口のなかで感じられる程度に干している。
最近では五島列島の鯔子で作った唐墨を
都内のある居酒屋に儲けなしで卸している。
毎年これを待っている客がいるのが嬉しい。


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