“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第29回
新蕎麦は旨くない

親しい蕎麦屋からは余計なことを書いてくれたな、
と怒られそうなことを述べる。
新蕎麦は9月初めから10月初めくらいに出始めることが多い。
そして、蕎麦好きは新蕎麦の出るのを
いまかいまかと待っているわけだ。
しかし、新蕎麦というものは香りは高いが
味は期待するほどは美味しくはなっていない。

新蕎麦をありがたがる蕎麦好きが多いので、
その時季は年々早くなってきている。
最初にどこの蕎麦がでるかというと、北海道産の早蒔きだ。
6月の始め頃に撒いた蕎麦で、
8月末には刈り取りしたものである。
それ以降、北海道の遅まきの蕎麦が出て、
それから、東北、北関東と新蕎麦産地前線が南下してくる。
早撒きの蕎麦は味が薄い。
また、早くだそうとして、熟成期間を長くとっていないので、
蕎麦本来の甘みは増していない。
さらに、北海道産のキタワセなどの蕎麦の種類は、
内地の蕎麦より香りは立つが、味は薄めだ。

このような理由で、
9月くらいに食べる新蕎麦は旨みに欠けている。
では、新蕎麦の何がいいかというと、
それまでの一年前の蕎麦粉に比べれば、
はるかに香りがよくなっているが、
一番喜ぶのは蕎麦屋自身である。
蕎麦は打つときに新しい粉のほうが打ちやすい。
夏の時季には一年近く経った蕎麦を用いるので、
つながりにくくなっている。
そのために、冬の時季には
蕎麦粉百パーセントで打っている蕎麦屋も、
夏だけはつなぎを入れているところもある。

では、蕎麦の一番美味しい時季はいつかというと、
12月から2月くらいのわずかな期間だ。
しかし、いい蕎麦屋は蕎麦の保管にも気を使っているので、
夏でも相当なものを出す。
新蕎麦は期待するほどは美味しくないが、
その香りを愉しむために
蕎麦屋の暖簾をくぐる価値が十分あるのは、もちろんのことだ。


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