“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第73回
能登の美味

能登半島の先端に珠洲市があり、
そこの銘酒として最近人気が高い宗玄酒造を一人で訪れた。
宗玄酒造は5千石の生産量を誇る
結構大きな地酒メーカーであるが、
そのなかで、千数百石は開運で
名杜氏波瀬正吉に能登流の酒造りを叩き込まれた
坂口幸夫杜氏が率いる平成蔵で造られる。
これは近代的な建屋のなかで
昔さながらの手作業で酒造りをする設備が充実していて、
極めて品質の高い地酒を醸している。

宗玄の営業部長の大門さんに能登空港まで迎えにきてもらい、
地元の和食の店で昼食をご馳走になった。
能登といえばいしり鍋。
いしりとは魚の肝を発酵させた醤油だが、
その発祥の地の能登半島では
烏賊のワタだけを使ったものが本来の伝統。
石川県全体では烏賊だけでなく
イワシのハラワタも使うことが多いらしいが、
この烏賊だけで作ったいしりは、
こくと上品さを兼ね備えていて、宗玄の燗によく合った。

この店では、いしり鍋は帆立の貝殻を使って、
烏賊と野菜類を煮る。
いしりには遊離アミノ酸が多量に含まれていて、
美味しいだけではなく、身体にもよいらしい。
この店で初めて見る魚を食べた。
「クロバンチョ」という名前。
焼き魚ででてきたが、たしかに全体がくろっぽい。
正式名は「メジナ」で地方によってはグレとも呼ぶらしい。
肉質は繊細で淡白で上品な旨みがある。
久々にこれまで知らなかった魚を食べた。

翌日の帰途は飛行機の出発が遅かったので、
輪島観光に連れていってもらった。
輪島の朝市では蟹がたくさん並んでいたが、
これはまだ日本海のズワイガニの解禁前なので、地物ではない。
解禁になると地物には
1匹ごとにタグがつけられて売られるらしい。

色々みていると「ふぐの子ぬか漬け」が目にとまった。
これは、石川県だけに許可されている
ふぐの卵巣のぬか漬けである。
猛毒があるふぐの卵巣も
ぬかに1年間漬けておくと毒が抜けるそうだ。
東京に戻ってから、ふぐの卵巣をおそるおそる口にしてみた。
とても辛い味付け。
命を賭けた割には旨みがあまり感じられない。
しかし、これはたまたま
買ったものの味付けが問題だったのかも知れない。
またの機会に別な入手先で試してみたい。


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