“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第74回
穴子は産地によって違う

江戸前の魚と瀬戸内の魚は同じ種類でも随分味わいが違う。
ここのところ、仙台、能登、出雲、鳥取、城崎と
地の魚の美味しいところを巡る機会があったので、
色々と地元で取れた魚を楽しめた。

仙台では一心という地酒の美味しい居酒屋へ行った。
色々な魚の刺身が旨かった。
従来生の魚にはそれほど魅力を感じていなかったが、
ここのものは旨みが乗っている。
このときのベストは穴子の白焼き。
江戸前穴子に匹敵する旨みが乗っていた。
松島湾で獲れるので、江戸前鮨屋では松前と呼ぶらしい。

江戸前の穴子は羽田沖が最高といわれているが、
いまでは羽田沖では獲れる量はかなり少ないらしい。
羽田沖でなくても江戸前の穴子は味が濃く、
しかも、煮るととても柔らかくなる。
この柔らかさは瀬戸内の穴子では無理なようだ。
穴子を鮨に使い始めたのは1800年代の最初の頃らしいが、
煮て柔らかくなる江戸前穴子があったことは
江戸前鮨好きは感謝しなくてはならない。
他に関東では常磐でも穴子は獲れる。

関西では明石、宮島の穴子が美味しい。
瀬戸内の穴子はどちらかというと
淡白、繊細で身はしっかりしている。
穴子は鰻と同様に栄養価が高いが、脂質は遥かに少ない。
それ故、さっぱりと上品な味は身体に優しい。
割烹料理としては、鰻よりは遥かに調理の幅があって、
板前の腕を発揮しやすいようだ。
割烹料理には江戸前穴子よりも、瀬戸内の穴子のほうが、
崩れにくくて味も淡白なので適している。

穴子の稚魚は「ノレソレ」といって、
つるんとした透明な小さい身体をしている。
これが、八方出汁に和えて食べると大変美味だ。
昔はあまり知られていなかったのが、
最近ではどこでも見られるようになってきた。
乱獲されると穴子も絶滅の危険性があり心配だ。


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