“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第81回
三浦大根

年末になると三浦大根が食べられるようになる。
三浦大根は練馬大根をルーツとして、
江戸時代から作られていた伝統的な農作物だ。
昭和40年頃には24000トンも
三浦半島から出荷されていたようだ。
大きく、重く、白い肌が美しい。
そして、もちろん味がいい。

ところが、消費者側の事情として、
核家族化が進んだ家庭では消費量が減り、
大きな大根は食べ切れなくなってきた。
それに加えて、スーパーなどの売る側では、
商品を置くスペースが必要なので、扱いにくい。

また、生産者側から見ると台風に弱い、
また、畑の面積あたりの収穫量が少ない
という青首大根に比べて不利な点が多い。
三浦大根は十分太くなるまで育てる必要があり、
成育期間が長い。
そのため、12月から3月までの収穫に対して、
9月に種まきを終わらす必要がある。
その後台風が来て大根が駄目になっても、
それ以降栽培をやり直すわけにはいかないので
全滅ということになる。

このような三浦大根に対する
家庭、小売店、生産者のそれぞれの理由で、
小さめで生産性がよく、病気にもなりにくい
青首大根に市場を奪われてしまった。
三浦大根が滅亡の危機にあることは、
伝統的食料が次世代へ伝えられないことにもなり、
大変残念なことだ。

しかし、まだ希望はあり、
この三浦大根をまだ栽培している農家が
三浦半島にいくらか増えてきた。
私は「たかいく農園」という三浦大根の栽培農家から、
毎年正月を迎えるときに、
自宅に三浦大根を取り寄せている。
三浦大根の旨さは火をとおしたときに遺憾なく発揮される。
特に、風呂吹き大根は絶品だ。

風呂吹き大根は、鍋に昆布を敷いて、
その上に輪切りにした大根を並べ、
水と酒で大根がひたひたになるような状態にして火にかける。
途中で弱火にして、
大根に串がすっと通る程度の柔らかさになったら出来上がり。
大根を皿に盛り、玉味噌をかけて、柚子皮をちらして提供する。
三浦大根で作った風呂吹きは本当に美味だ。


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