“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第82回
下仁田葱

年末になるとかならず取り寄せるものの一つとして、
下仁田葱があげられる。
美味しいもの好きの仲間の実家が下仁田にあり、
そこで栽培しているものを分けてもらうのだ。
彼の実家は下仁田葱のなかでも、
特に原種に近い甘みの強い種類にこだわって栽培している。
下仁田葱も現在5種類ほどに分かれるそうだ。
最近の下仁田葱は太いものが好まれるが、
太い下仁田葱は逆にやや大味で、
細い昔の種に近いもののほうが甘いらしい。

我が家では、下仁田葱はまずは正月にすき焼きに使う。
火にかけると甘みが強くでてくるのが、下仁田葱の特徴だ。
肉の出汁に葱がからんで、とろっと甘くなったところを、
ふうふうしながらほおばる。
噛むと、じゅっと、旨みのある汁が口の中にあふれてくる。

すき焼き以外にも、
単純に焼いて醤油をかけて食べてもいいし、
揚げても旨い。
スープをとるのに使ってもいいし、グラタンもいける。
味噌との相性もとてもいい。
まさに葱の王様といえる。
ただし、薬味には辛味が強くて向いていない。

下仁田葱は葱のなかでも特に病害に弱く、
成育期間も1年以上と大変手がかかる農作物だそうだ。
栽培の歴史は古く、幕府にも献上していたので、
殿様葱とも呼ばれているらしい。
下仁田地方の風土にだけ合うようで、
他で栽培しても美味しくはならない。
最近では都内のデパートで
随分、下仁田葱を見るようになってきた。
入手したら、冷蔵庫に入れずに、
涼しい場所に立てて保存しておくことが長持ちの秘訣だ。
野菜は育った状況と同じような姿勢で保存しておくことが、
一番元気さを失わない。

年末の忙しい時季に、
しっかりと正月の食材を準備することは、
とても重要なイベントとなっている。
今年の下仁田葱の出来具合も楽しみだ。


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