“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第85回
讃岐饂飩

香川県琴平の丸尾本家は
悦凱陣(よろこびがいじん)という、
骨太のしっかりした旨みを持った地酒を造っている。
丸尾本家には毎年必ず訪問しているが、
蔵においてある熟成酒を飲むことの他に、
讃岐饂飩屋巡りが楽しみだ。

丸尾本家を訪れるたびに、
丸尾社長が車で讃岐饂飩屋に連れて行ってくれる。
私は饂飩はつるつるしている食感を楽しむだけで、
味はあまりしないものだと思っていた。
しかし、讃岐饂飩に出会ってから考えが全く変った。
饂飩自身に旨みがあることにはびっくりしたのだ。

丸尾社長は評判の店や、
あるいは、あまり知られていない店に数軒連れていってくれる。
それらの店で提供される饂飩は本当に安くてびっくりするが、
店ごとに出すスタイルが違い、とても楽しめる。
讃岐饂飩巡りが人気が高いことがよくわかる。

東京では、やはり十条の「すみた」が
讃岐饂飩屋としては一番好きだ。
この店の饂飩を食べると、
他の饂飩屋にはもう行かなくてもいいとさえ思えてしまう。
そんな「すみた」が最近さらに出汁の質が向上した。
伊吹島の「いりこ」(カタクチイワシ)を
仕入れるようになったからだ。

この伊吹島の「いりこ」は
讃岐饂飩屋が欲しがるブランド品だが、
いまでは生産量がどんどん少なくなっている。
いりこの漁獲量が年々減っているためで、
そのためにプレミアム価格がついたりしている。

「すみた」では、
伊吹島から適切なルートで仕入れるようになったが、
それまで使っていたいりことは性質が随分違っていて、
出汁として完成させるのに随分苦労したとのことだ。
その汁だが、饂飩を決して邪魔せずに、
綺麗で深みのある味わい。
店を出たあと数時間口の中に余韻が残って、
饂飩の旨さを思い出させた。


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