“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第109回
カラカワは100年の年輪のうまさ

またまた、初めての食材に巡り合えた。
正月あけに、単行本執筆のための蔵元取材の旅の際である。
今度の本は日本酒について。
本当に美味しい日本酒の禁断の飲み方、
それに答えてくれる本物の酒造りを取り上げ、
日本酒の熟成が日本酒復活の鍵となることを書いている。
そのため、本物の酒を造っている蔵元さんたちを取材した。

広島、琴平と取材を終えて、
姫路からバスで50分のところにある下村酒造に到着。
こちらは、奥播磨の銘柄で旨みたっぷりの日本酒を醸している。
最近とみに人気が高い銘柄だ。
朝の8時から仕込みを見せてもらい、
酒造責任者の下村専務にインタビュー。
下村専務とは昔からの付き合いで、
酒盃を共にすることも数え切れない。
しかし、あらためて専務に
奥播磨の酒造りの考え方を聴いてみて、
その真面目な姿勢に共感を覚える。

で、肝心の食材だが、取材を終えて
専務に近くの蕎麦屋に連れていっていただいたときに遭遇した。
そば処「かじかの里 たなか」という
谷あいの奥深くにひっそりとたたずむ蕎麦屋で、
シチュエーションとしては、
丹波笹山の「ろあん松田」に似ている。
昨年の秋に出来たばかりの蕎麦屋だ。

店内はむくの木をふんだんに使っていて、温かみを感じる。
暖房は入り口の際にあるダルマストーブ。
昔懐かしい。
そこのメニューに「珍味からかわ」
と書いてあるのが目にとまる。
これが何かというと、
山椒の木の幹の一番外側を剥いた中にある甘皮だという。
それを佃煮にしたもの。
相当辛いですよと言われる。

でてきたものは、茶色の茸のようなもの。
口に入れると上品な甘みも感じる。
それほど辛くはないと専務と話ながら、
奥播磨の山廃純米の燗を口にする。
とてもよく合う。と、思った瞬間に、
山椒の華やかな香りとピリ辛さが襲った。
これがたまらない。
マーボ豆腐の比ではない山椒のダイレクトな旨さ。
この酒肴一つで一升瓶を空にすることもできそうだ。

聞けば、百年にはなる樹齢の
30cmくらいの太い幹の山椒でないと駄目という。
谷あいを奥に入った山林のなかで
自生しているものを探すのだそうだ。
100年の年輪とは贅沢な酒肴だ。
それを聞いて、旨さを納得。

取材旅行はこのような新しい食材にめぐり合えることが幸せだ。
この地方では伝統的な食材だそうだが、
五十代より下の世代はもう知らない、
幻の伝統食になっているとのことだった。


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