“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第111回
「日野菜漬」「さば」のへしこ

伊賀上野にとても小さい酒蔵である「森喜酒造場」がある。
夫婦で酒造りを行い、
現在は百数十石の日本酒を製造している。
蔵には薮田、エアシュータなどの近代設備がほとんどなく、
蒸米、仕込み水なども麻布、桶で人力で運んでいる。
江戸時代の造りにタイムスリップしたような蔵だ。

銘柄名は「るみ子の酒」「妙の華」「英」(はなぶさ)と三種。
全量純米で仕込んでいる。
「るみ子」というのは森喜酒造場の娘で、
現社長と結婚してから、
廃業寸前の蔵を子供を負ぶいながら建て直した。
骨太でしゃきっとした酒質が人気があり、燗をして旨い。

久しぶりに森喜酒造場を訪問したところ、
夕食に近所の蕎麦屋に連れて行ってもらった。
そこで、「るみ子の酒」を飲みながらいただいた酒肴が
なかなかよかった。
まずは、「日野菜漬」。
これは、近くの滋賀県日野町の伝統野菜である
「日野菜」を漬けたもの。
日野菜は蕪の仲間らしいが、
細い大根のような形状をした根を食べる。
この漬物が「るみ子の酒」の燗になかなかよくあった。

もう一つ、酒を進ませたのは、鯖の「へしこ」だった。
「へしこ」というのは北陸の伝統的な魚の漬物で、
何故伊賀上野にあるのかは不明。
これは、魚を卸し、まずは塩漬けにして「ひしお」を抽出し、
一旦魚を取り出してから、
「ひしお」に糠を加えて、糠漬けにして、
一年程度熟成したものを言う。
色々な魚でやるらしいが、鯖が一番ポピュラーだ。

鯖の「へしこ」を炙ったもの。
これが、燗酒にとてもよく合う。
適度な脂分と凝縮した旨みのバランスがとてもいい。
北陸の魚を長く貯蔵しようということから生まれた
伝統文化の素晴らしさを堪能。

もちろん、この店での最後には蕎麦をたぐることになった。
熟成香のする、きちっと仕事した蕎麦で満足度は高かった。


←前回記事へ 2005年1月17日(月) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ