“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第181回
老舗居酒屋のよさは自然淘汰の結果

やっと日本酒の単行本の原稿を脱稿した。
当初予定より遅れたが、
そこそこの内容にまとめることができて、ほっとしている。
そのなかで、お勧めの居酒屋を案内する章を設けたが、
今回、取材してあらためて認識したのは、
いわゆる「老舗居酒屋」のよさだ。

どんな店を老舗居酒屋と呼ぶかというと、
「創業が昭和初期以前で、
 代替わりしても昔からの商売を頑なに守っている店」
と、私は定義している。
例えば、神楽坂「伊勢藤」(いせとう)、
根岸「鍵屋」、月島「岸田屋」、
森下「山利喜」(やまりき)、
神田「みますや」などがあげられる。
この、老舗居酒屋は、とても居心地よく酒を飲むことができる。
それは、数十年の歴史を感じさせる建屋の佇まい、
室内のしつらえがそうさせるだけではない。
店の応対、酒、酒肴、客層、
全てにわたって歴史を感じさせるよさがある。

最初、私は老舗居酒屋のよさは、
長年の店の歴史が築いてきたものであり、
他の新しい居酒屋には真似ようもないのでは、と考えていた。
ところが、色々な店を取材しているうちに、はっと気がついた。
歴史が長いから、いい店になっているのではなく、
いい店だから長く続いているのだと。

これは、生物の進化にとてもよく似ている。
悪い遺伝子は淘汰されて、いい遺伝子だけ残るわけだ。
つまり、老舗居酒屋と呼ばれる歴史を持った居酒屋では、
最初から、客がとても居心地のよくなるように商売をしていて、
それで、客と店の信頼関係ができて、
いまでも残っているというわけだ。

ということは、新しく商売を始める居酒屋でも、
老舗居酒屋のよさをよく研究すれば、
同じように居心地のよくなる店になるはずだ。
このような観点で、
店のコンセプトを検討して創業する店は稀だ。
しかし、私の知っている限り、一店だけある。
それは、幡ヶ谷駅近くの路地沿いの
「たまははき」だ。
この店のよさは、また別途お知らせしたい。

考えてみれば、居酒屋に限らず、
長年続けてきた老舗の料理屋の居心地は
最初からよかったのに違いない。


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2005年4月25日(月)

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