“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第219回
極秘割烹料理屋の初公開

拙書「世界一旨い日本酒 熟成と燗で飲る本物の酒」
(光文社新書)が発刊されてから1週間ほど経過した。
おかげさまで、売れ行きの出足はなかなか好調。
この本の出版がきっかけとなって、
低迷状態の日本酒業界が活性化してほしい
という思い入れを込めて執筆したが、
そこまではいかずとも日本酒ファンが増えてもらえば
とても嬉しいことだ。

この本では、燗を美味しく飲める居酒屋・料理屋を
108軒紹介してある。
本の帯には107軒となっているが、
これは最後に本文に追加した店があったからだ。
ところが、帯の印刷にはすでに入っていて間に合わなかったのだ。

最後まで掲載するかどうかで悩んだ割烹料理屋を
このコラムで紹介しよう。
何故、悩んだかというと、酒も料理も私の好みそのものの店で、
まだメディアにも露出したことがなく、
店の側もマスコミ取材を断っているのか
と気を回して考えていたのが一つの理由。
それと、せっかくの店を露出して、
色々な雑誌でも扱われ始めて、
客が急激に増えるのはあまりいいことではないとも考えたからだ。
さらに本音を言うと、
せっかくの極秘のいい店を露出するのはもったいない、
自分だけの情報にしておきたいという気持ちもあった。
しかし、店側の考えを確認したところ、取材拒否の考えはなく、
メディアに踊らされるような状況にはならないと判断して、
もったいないと思いつつ掲載した。

その割烹料理店の名前は「岸由」。
何がお気に入りかというと、酒は好みの銘柄の日本酒ばかり、
料理はいい素材のものを的確な調理技術で提供する。
鳴門の漁師の村公一君の鱸も仕入れていて、
それを熟成させて提供する。
鱸の内臓を料理してくれることもある。
派手な料理ではないが、しっかり手間隙かけた仕事をして、
他の店では味わえない美味しさが堪能できる。
初夏のある日の献立を紹介しよう。

水無月お献立
先付 薄菜 蓮根豆腐 山葵 土佐酢
造り 鯒(こち)造り すだち 塩
煮物椀 鱸 酒蒸し 若布 石川芋 花山椒
油物 加茂茄子田楽
八寸 (かます)すし 川海老唐揚
鮎一夜干し 煎り伏見唐辛子
お食事 雲丹 炊込みごはん
水菓子

先付は、しっかりとした出汁の土佐酢が食欲を呼び起こし、
お造りの鯒がこれまた、
適度な熟成で旨みを最大に引き出していて美味。
鱸の煮物椀は、やはり村公一君の育てた若布が入っていて、
とても深い味わいで、いつまでも余韻が口の奥に残る。
鱸の焼物は頭と尻尾の部分。
これを、上品に食べては悔いが残る。
骨の間の肉の旨みをしゃぶりつくす。
加茂茄子田楽の味噌味が茄子の甘みを引き出している。
他の料理もいずれも美味。
この日に飲んだ日本酒は、以下のように私の好みのものばかり。
村君の濃い味の鱸とよくあう。

秋鹿 山廃純米無濾過生原酒 雄70%精白
宗玄 無濾過純米生原酒 山田錦
旭若松 純米原酒
悦凱陣 無濾過純米生原酒
神亀 ひこ孫

鱸には悦凱陣の骨太の旨みが本当によく合った。
同じ四国どうし。
岸由は都内にあるが、ロケーションがあまりよくない。
それが、また、逆にこんな場所にこんないい店があるのか、
と意外性の価値にもつながっている。
知名度が高くなる前にぜひ訪問していただきたい店だ。


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2005年6月23日(木)

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