“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第236回
江戸前料理

江戸前料理の鮨、鰻、蕎麦、天麩羅などは、
いずれも屋台で始まった。
拙書『蕎麦屋酒』でふれたが、
関西は商人の町で、
職場に住み込みの住人が多かったのに対して、
江戸では職人が多く、
仕事現場から自宅のある長屋に帰る途中で
一杯やって憩うことが多かった。
そのさいに、鮨をつまんだり、
天麩羅をつまんだりしていたわけだ。
長居はしないので、
当然、提供するのに手間がかからない料理になる。
それで、調理法が単一な専門料理が発展した。

江戸前と最初に名づけたのは、どうも鰻屋らしい。
その後、鮨屋、天麩羅屋、蕎麦屋などに波及する。
これらに、焼鳥とおでんを加えると、
活け物、揚げ物、焼物、煮物、
それに、食事と割烹料理の調理が全て揃うのがまた面白い。

ところで、江戸前の魚というと、東京湾の魚が中心。
これは、瀬戸内の魚と種類は同じものでも味がとても濃い。
流れ込む河口の具合で、東京湾はプランクトンが多く、
それを食べる魚の味が濃くなるらしい。
それで、江戸前鮨はそれにあった濃い目の酢飯に乗せる。
また魚の味をさらに引き出すために、2〜3日熟成させたりする。

江戸前専門料理屋ではなく、
割烹料理屋の『三亀』を先日訪問したときに、
羽田沖の穴子のみぞれ煮をいただいた。
これは薄めの出汁で煮てから、
最後に大根おろしをかけただけのものだが、これが秀逸。
東京湾の魚を関西割烹料理にしても美味しいことが分かった。

これが、瀬戸内の魚を江戸前料理で食べると
逆にどうも物足らない。
関西でも江戸前鮨で頑張っている店があるが、
瀬戸内の魚は淡白で繊細なので、酢飯に負けてしまうことが多い。

このように、東京湾は江戸の食文化発展の背景となった
魚の宝庫だった。
その意味では東京湾は
世界遺産にしてもらってもいいかも知れない。
東京湾は一時に比べると水はいくらか綺麗になっているようだが、
美味しい魚の漁量はだんだん減っている。

最近、東京湾の水質を改善するプロジェクトを起こしたい
と考えるようになった。
例えば、東京湾の底に生息する
海老やかれい鰈はとても美味しいが、
水面近くを泳ぐ魚類は油臭くて食べられないことが多い。
水面近くの油だけを除去しただけで
美味しい魚が戻ってくるかわからないが、
総合的な観点から東京湾の水質改善を検討する提案を
関連省庁や学識経験者、
また産業界にそのうちしてみたいと考えている。


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2005年7月18日(月)

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