“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第287回
博多「お半」の至福

お造りでは、鯛の松皮造り、ミズイカ(アオリイカ)、
鮪トロがでてきたが、どれも、熟成させたものだった。
鯛もミズイカも十分な甘みがでていて、
もっちりした食感もとてもよく、好みであった。
トロはきめ細かい脂がのっていて、こちらもとても旨い。
ご主人の話では、自分自身が魚を熟成した旨さが好きなので、
お客様にもそのようにして出しているとのこと。

次に提供されたのは、椀。
これが、とてもほっとする味で、身体に優しい。
何か魚の出汁とは違い、肉系の味がする。
なんと豚の背脂の沢煮椀であった。
背脂を炒めて、カリカリにして出汁をとるという。
たしかに、脂が抜けていて、旨みだけが汁に移っている。
それに、牛蒡と人参の千切りが入っている。
一味が隠し味でアクセントとなっていた。

背脂がこんなに上品な味になり、
しかも、懐石コースのなかの
椀として機能するということだけでも大変な驚きだったが、
それが、身体に優しい作用を感じさせるところに
ご主人の料理の凄さを感じた。

その直後は、おしのぎで、昆布で巻いた鮨がでる。
こちらはねっとりとした酢飯が、
逆に口のなかをリセットさせてくれる。
そして、その後に提供されたのが、自家製カラスミ。
昨年作ったものを真空パックにして保存しているそうだが、
カラスミの保存のためだけに真空パックの機械を購入し、
40万円の投資が必要だったとのこと。

このカラスミは、私が作るものに酷似している。
柔らかで中身が半乾きのように作ってあり、塩気も少ない。
女将と話をしたら、製法はほとんど同じであった。
7年間色々と試行錯誤した結果、
この製法にたどり着いたという。
あながち、私のやっていたカラスミ作りも
間違ってはいなかったようだ。
しかも、両方とも
五島列島の鯔子(ぼらこ)を用いているために、
近い味になるのであろう。

「お半」の料理は、
食べるほどに身体にやさしく作用してくるのが、感じられる。
その旨を女将さんに話をしたら、
まさに、自分の店が目指しているものだという。
理解をしてもらえて相当嬉しいようだった。
このような、お客と店のコミュニケーションができると、
居心地はますますよくなってくる。


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2005年10月4日(火)

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