“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第319回
カラスミの自家製作開始

今年もボラ子が不漁で、高値がついているようだ。
ボラ子が築地に入るのは9月末から10月。
そこから塩漬けをして、塩抜き、乾燥と進むので、
そろそろ街中の割烹や居酒屋で
自家製カラスミがお品書きにならぶ季節となった。
カラスミを自家製作する店は最近すごく増えたようで、
居酒屋のならぶ繁華街を歩くと、
ボラ子を干している風景によく出会う。

巷でカラスミが食べられる時季に、
ようやく私のカラスミ造りが始まる。
というのは、ボラ子はまずは東京の近海ものが出始め、
それから、静岡、三重、和歌山沖産と推移していく。
そして、最近、私の使っている五島列島のボラ子が出始めるのは
11月に入ってからだからだ。

近海のボラ子はやや油臭いことがよくある。
というのは、ボラは海の浅いところや河口に生息して、
川を上ったりするので、
東京周辺の海のボラは油汚れの影響を受け易いからだ。
そういう観点で、近海もののボラ子は比較的卸値が安いが、
和歌山沖のものは結構な値段になることが多い。
五島列島のものも価格は高いが、
品質は和歌山沖よりもさらに上を行くことが多い。
臭みや雑味がない、綺麗な味がするのはもちろん、
ボラ子の卵の一粒一粒がしっかりして、食感が素晴らしい。

そういう観点で、数年前に五島列島のボラ子を使い始めてからは、
他のボラ子が使えなくなってしまった。
今年は不作で
キロ1万5千円から1万8千円はすると聞いていたが、
小振りのものがもっと安く入手できて、ラッキーだった。
品質は大きいものと遜色はなかった。

そのボラ子をまずは塩漬けする。
ここで、臭みの多いボラ子は3日くらい漬けて、
臭みを取ることになる。
しかし、いいボラ子はそんなに長く漬けると
旨みもいっしょに流れ出すので、私はもっと短い期間にしている。
今回は、昼間は仕事にでかけていることもあって、
1日漬けておくことにした。
塩は例年同様「海の精」。
それを取り出して、水洗いして塩を洗い流し、
その後日本酒に漬ける。
漬ける時間は、塩漬けと同じ長さにする。
今回は奥播磨「無濾過純米生原酒」山田錦八割磨きを用いた。

酒に漬けたあとは、焼酎で洗ってから陰干しにする。
最近は天日に当てない干し方が主流になっているようだ。
また、ガラスやアクリル板で挟み込み、
かちかちに固める製法が昔からあるが、
最近の自家製カラスミは、
あまり固めずに、卵の粒が感じられるように
ふわっと乾かすような仕様が増えている。
私も天日を避けて、圧力をかけずに柔らかく干す。
天気次第であるが、あと1週間くらいで、
美味しいカラスミが完成する予定だ。


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2005年11月17日(木)

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