“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第320回
ワインに媚びる日本酒に明日はない

電車公告を見てびっくりした。
「大吟醸ヌーヴォー」という文字とボトルの写真。
ある大手酒造メーカーの宣伝だった。
この時季のボージョレーヌーヴォー解禁に合わせて、
新酒を売ろうという意図で、
大吟醸以外にも2種類の
ヌーヴォーと称している日本酒が並んでいた。

もともと、ボージョレーヌーヴォーは
熟成しても旨くならない安酒で、
その販促手段として新酒で飲むアイディアを出したのが、
ジョルジュ・デビュッフュ。
今ではボージョレーの最大手となっているが、
彼のアイディアでボージョレーのワインは
世界に認知されることになった経緯がある。
日付変更線のすぐ脇にある日本では、世界で一番早く飲めると、
これまたワイン業界が
風潮に弱い日本人を煽ったことが功をなして、
ボージョレーヌーヴォーは大ブームとなって、
バブルのころは誰よりも早く飲むことが
自慢の種になったりしていた。
最近はこの一時のブームほどではないが、
まだこの時季には何かと話題に取り上げられている。

この、日本酒のヌーヴォーは、
ボージョレーヌーヴォーにあやかろうという魂胆だが、
これまでも、日本酒業界は
何かとワインを意識した売り方をしてきていた。
吟醸酒が流行り始めたころも、「まーワインみたい」と、
本当のワインの味を知らないキャピキャピギャルの言葉を信じて、
ワインの樽香を意識した
カプロン酸系の吟醸香を出す酵母の開発などに努力してきた。

また、オーク樽で熟成させたり、
ワインのような洒落たボトルに詰めたり、
日本酒本来のよさからははずれる造り方、売り方をする
地酒メーカーも多くなっている。
なんとか、日本酒の低迷から復活させたい
という気持ちはわかるが、
日本酒の本来の個性を表に出さずにワインに対比させる方向は、
間違っているとしか思えない。

ワインはワインのよさがあるし、日本酒には日本酒のよさがある。
それは、似ている部分もあれば、全く違う部分もある。
日本酒業界がもっと自信を持って、
世界の食中酒として日本酒のよさを活かした
製造・販売をしてもらいたいものだ。
ワインに媚びているばかりだと、
どんなに努力してもワインは勝てるはずがない。
日本酒は低迷の下り坂を転げ落ちるばかりになってしまう。


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2005年11月18日(金)

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