“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第384回
シェリーは日本酒に似ている

シェリーというと、
フィノの軽いタイプだけしか知らない人が
圧倒的に多い。
日本人ばかりでなく、欧米人でさえも
ほとんどは、食前酒のドライシェリーだけが
シェリーと思っている。
これは、ビールは
ピルスナータイプしか知らない日本人が
とても多いことに似ているが、
ビール以上にシェリーは知られていない。

ところが、フィノにもいろいろなタイプがあり、
さらに、フィノ以外のオロロソ、アモンティリャード、
それに、甘口の
ペドロヒメネス、モスカテルで作られたシェリーなど、
ドライなフィノとは違った様々な味わいのものがあり、
とても奥深い。

前述したように、シェリーで使用する葡萄は、
パロミノ、ペドロヒメネス、モスカテルの3種類だけで、
しかも、甘口のものを除いたほとんどのシェリーは
パロミノで造られている。
それにもかかわらず、
味わいのバリエーションが豊かなのは、
造りの違いがあるからだ。
従って、シェリーのテロワールとは
畑のことを指さずに、醸造所をのものを指す。
これが、日本酒ととても似ている点だ。
原材料の違いは少なく、
造る場所、造る方法の違いによって個性が生まれる。

では、どのように造りが違うかというと、
大雑把にわけて考えて、
フィノとオロロソとアモンティリャードの違いは、
発酵面の液面に酵母で造られる膜が
発生するかどうかということによる。
フィノは膜がついたものだ。
この膜は脂肪酸とタンパクが合成されたもので、
「フロール」と呼ばれている。
フロールは発酵液を空気から遮断して
劣化と褐変を防止する。
それでフィノは透明感のある
スッキリとした辛口の味となる。
オロロソはフロールが付かない。
あるいは、人為的につけない。
オロロソの場合は空気に触れながら酸化熟成することになる。
アモンティリャードはフロールが付いた状態から、
なくした状態に変化させて酸化熟成させたもの。

フィノが軽快な飲み口なのに対して、
オロロソは風味が豊かで、
食中酒として赤ワインの変わりにもなる。
また、熟成を経て深みのある香味がなんともいえなくなる。
ペドロヒメネスやモスカテルで造られた
極甘口のものも合わせて、
シェリーは食前、食中、食後と様々な愉しみかたがあるのだ。


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2006年2月16日(木)

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