“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第410回
シェリーのさらなる誤解

シェリー談義が面白くなってきたとおもっていたら、
3月20日の友里氏の方向違いのコメントには
期待をはずされてしまった。
前回の私のコメントは、
シェリー好きなら誰でも知っている話を書いたのだが、
どうも理解されていないようなので、
ここで、話を整理してみよう。

最初に私がシェリーミュージアムでの体験を書いてときの論旨は、
シェリーの味の深みの違いが、
狭い範囲の同じ種類の葡萄であるにもかかわらず、
ボデガの造りの違いとしてあらわれるということ。
つまり、シェリーのテロワールは畑ではなく、
ボデガそのものと考えられているということだ。

シェリーに使われる葡萄は
ペロミノ、モスカテル、ペドロヒメネスの3種類。
モスカテル、ペドロヒメネスは甘口シェリー用で、
ペロミノと混合することもたまにある。
しかし、シェリーに使われる葡萄は圧倒的にペロミノが多く、
そのペロミノ1種類だけでも、
フィノ、オロロソ、アモンテリャード、パロ・コルダトなどの
全く違ったタイプのワインになる。
そして、同じ種類のシェリーでも
ボデガによる違いは歴然としている。

ブルゴーニュ赤ワインも
実は葡萄はピノノワール1種類だけでなく、
ボージョレーで使われることで有名なガメイ、
さらにはあまり知られていないが、
セザール、トルソという葡萄の4種類が法的に認められている。

ガメイはボージョレー以外にも
パストゥーグランという下のクラスのブルゴーニュで
ピノノワールと混ぜられて使われている。
他の2種類もピノノワールに僅かに混ぜられることがある。
しかし、高品質のブルゴーニュは
ピノノワールだけを使うことが多いので、
1種類という見方は間違いではない。
ペロミノは白葡萄だが、
フィノのように白ワインのような色のものと、
オロロソのように濃い褐色のものというように、
色だけでも全く違うものができる。
味もまたしかり。
そして、ボデガの造りによって、
同じフィノ、オロロソでも様々なバリエーションが楽しめる。

そのつくりの違いが、スティルワインと比べると、
ブランデー添加のやりかたで
フロールの生成をどうするかということと、
ソレラの熟成のやり方でバリエーションが増えているということだ。
つまり、スティルワインでいうと、
ボルドーとブルゴーニュの差ほどの違いが
シェリーの一つの葡萄でできる。
ブルゴーニュワインも
一つの葡萄でも様々な味わいのものができるが、
それは造り手の違いもあるが、地域、畑の違いも大きい。
それと比べれば、シェリーの味の深さの違いを
理解してもらえるかと思ったが甘かった。

友里氏は、知らない分野については机上の知識、
あるいは業界の知り合いから学ぶ知識だけで
片付けているようだが、
シェリーのバリエーションを実践して飲んでみれば
理解できるはずだ。
ドメーヌシャンパンのときでもそうだが、
実践なくして真理に到達することはできない。
このときには、
高品質のドメーヌシャンパンを入手するための情報を
メイルで友里氏に連絡をしたが、
それがどうなったかはなしのつぶてだ。
業界の常識といわれているものも、間違いが数多くある。
少しの種類のものしか飲まずして、
大手のシャンパンのほうが旨いといい切るのは、
例えば、久保田万寿と、月桂冠笠置屋を比較して、
大手の日本酒は地酒より旨いといっているようなものだ。

友里氏のコラムと私のコラムで相乗効果をよりあげるには、
友里氏も実戦経験を重ねて自分で味の真理を理解し、
コラムのよりブラッシュアップを計っていただきたい。
そうすれば、万年ネタ不足などと嘆かなくてもすむはずだ。


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2006年3月24日(金)

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