“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第411回
大手の日本酒は旨いか?

最近、ほとんどの居酒屋は地酒を置くようになっている。
また、割烹料理屋でも地酒を置く店も増えている。
これは大変好ましいことだが、
大半の店はただ知名度が高いというだけの地酒しか
置いていないことが多い。

客の側も、知名度が高い地酒を美味しいと
信じて注文するわけだから、
それを中心に品揃えをすることは自然とも言えるが、
自分の店にあった地酒を味で選ぶ努力が不足している。
さて、知名度の高い地酒の多くは、
吟醸香が高いか、炭素濾過をかけすぎて
味が平板になっているものが多い。
そのような品揃えしかない店には極力いかないようにしているが、
つきあいや、あるいは、初めての料理屋訪問で、
苦手な地酒しかおいていないことに遭遇することがある。

香りが高すぎても、味が平板でも料理にはまず合わず、
料理をまずくさせるだけなので、地酒以外を頼むことになる。
無難でビールだけにするという手もあるが、
大手の純米酒か本醸造があれば、その燗を頼むことが多い。
大手の酒はまずいという印象を持っている人が多いが、
実は同じ価格で大手の酒と地酒を比較すると、
大手の酒のほうが旨いことが多い。
特に、1升2千円前半くらいの酒は、
大手のものはよくできている。
また、月桂冠「平安」、菊正宗極上、
などの3000円前後の酒はよく燗あがりする。
さらに、剣菱「瑞祥」などの5000円前後の酒は
ほどよく熟成していて、燗にすると旨みがあふれてくる。

また、白雪の小西酒造の工場脇の
ベルギービールのビアホール限定の「淡にごり」という濁り酒は、
とてもまろやかで、
上位の地酒に匹敵する旨みを愉しめた経験もある。
このように、大手の本醸造、純米クラスの日本酒は、
苦手な地酒だけしかなくて困ったときの助けになる。
しかし、大手の酒も
アルコール添加量が多い普通酒しか置いていないときには
本当に困ってしまう。
大手の酒造メーカーは、
少なくとも本醸造以上の酒だけを造るようにするべきだ。
コストダウンに走り、大衆向けの普通酒の
大量生産を続けたところに、
いまの日本酒業界の衰退の原因がある。
国が普通酒を廃止する指導をしたらいいのだが、
これまた、酒税法で得られる税収の大半は
普通酒の売り上げに依存しているので、難しい。

日本酒造組合中央会や日本醸造協会の講師を引き受けたときには、
地酒の蔵元さんたちに、
いい造りの個性ある日本酒を造ることを勧めてはいるが、
大手酒造メーカーの姿勢が変わることが重要だ。


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2006年3月27日(月)

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