“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第542回
「藪蕎麦 宮本」の技と粋を堪能

宮本の駐車場には12時過ぎ頃到着。
駐車場から建屋の脇にある入り口をガラガラと開くと、
まずは、タタキがあり、
その奥が数奇屋造りの座敷となっている。
店内には二組の客が来ていた。

まずは、女将さんに久しぶりの訪問のご挨拶。
そして、何を頼むかお品書きをしばし眺める。
今回は車で来ているので、残念ながら蕎麦屋酒は無理だ。
ということで、酒肴は他のまずに、
蕎麦だけで通すことにした。

まずは、天麩羅蕎麦。
運ばれてくるときに、天麩羅がジューと音をたてていて、
そのまま目の前に置かれる。
他の店でこのように、
天麩羅が音を立てて運ばれてきた経験がない。
まず、汁を味見し、蕎麦をすする。
そして掻き揚げ天麩羅が熱々で幸せが追いかけてくる。
天麩羅は食べ終わるまで熱々というところも凄い。

後で宮本さんに天麩羅の音といつまでも冷めないヒミツを
恐る恐る尋ねてみた。
「衣にヒミツがあるんですか?」という質問に、
宮本さんは照れながら、
「天麩羅を寸前に揚げているだけだよー」と答えてくれた。
あまりに、当たり前の答えで唖然。
それと同時に、
他の蕎麦屋がいかに作り置きが多いのかを理解する。

冷たい蕎麦が出てくる前にキスの天麩羅が提供された。
注文した覚えがないと思ったら、
親方からと女将さんに伝えられる。
わざわざ遠くまで訪ねてきてくれたという思いを
断るのも何なので、ありがたくいただく。
蕎麦屋の天麩羅であるが、とてもレベルが高い。
酒が飲めないのが余計残念だ。

次が手挽き蕎麦。
これは、玄蕎麦(殻を剥いていない蕎麦の実)を
手挽き石臼で挽いた粉で打った蕎麦。
もちろん、殻の部分は篩で丁寧に除去してある。
蕎麦の実は甘皮のあたりが一番旨みがある。
その旨みを全て引き出ししていて、まさに蕎麦切りの原点。
土臭い野風味あふれる香りと味が楽しめる。
そして、最後にせいろ。
こちらは、しっかりとした喉越しと味わいのバランスがいい。
スムースではあるが、
それでいて、香りも味も阻害はされていない。

宮本の冷たい蕎麦用の汁は、しっかりと醤油の辛さがあり、
蕎麦がしゃきっと引き立つ。
最近は出汁を多めにして、柔らかい汁が多いなかで、
江戸前の粋を演出している。
宮本さんと1時間ほど歓談して、
色々な蕎麦業界のことや、
蕎麦そのものについて、意見を交わす。
宮本さんの不満は、
江戸前の粋な蕎麦屋が少なくなっているなか、
なかなか自分の蕎麦を理解してもらえる客が少ないということ。
これほどの店が、客がなかなか来てくれないらしい。
静岡を通るならば、必ず寄りたい蕎麦屋だ。


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2006年9月26日(火)

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