“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第644回
日本酒の加水・火入れ派と生原酒派

ある程度日本酒に見識のある飲み手を分類すると、
まずは、香り重視と味重視に分かれる。
かつての吟醸酒ブームから、
香り重視が地酒業界と消費者の大半を占めている。
それはそれで一つの酒文化を作っていて結構なことだ。
しかし、私は日本酒の香りが強すぎるものは苦手で、
落ち着いた味わいの酒が好き。

味重視の業界人、消費者をまた分類すると、
加水・火入れ好きと生原酒好きに分かれる。
加水した日本酒を推す業界人のなかには、
無濾過純米生原酒は濃すぎて疲れるので、
一時の流行で終わるであろうと言っている人もいる。
最近は、無濾過純米生原酒が
メディアにもよく紹介されるようになって、
一つの新しいファッションと勘違いして安易に造っている蔵や、
それを安易に売っている小売酒屋も多い。
しかし、流行ととらえるのは、日本酒の本質を理解していない。

以前から主張していることだが、
どんな無濾過生原酒でもいいわけではない。
きちっと手間隙かけて原料処理、麹造り、酒母造りをして、
完全発酵に近い造りをした純米酒は、
無濾過で火入れをしなくても、綺麗な味わいで飲みやすい。
しかし、手間隙を省いて安易に造った純米酒は
濾過をしないと雑味が多く、
喉にひっかるように強く感じることになる。
このように、いい造りをしている、
あるいは、努力している蔵はとても少ない。
それで、無濾過純米生原酒は、
一時の流行と判断されてしまっているのは残念なことだ。

さて、いい造りをしている造り酒屋、
いい造りの酒を愛する居酒屋、小売酒屋でも、
加水・火入れ派と、生原酒派に分かれる。
前者の推進教祖としては、故上原浩先生に神亀の小川原専務。
それに傾倒している、
神田「新八」の佐久間さん、
数寄屋橋「バードランド」の和田さんなど。
これに対して、生原酒推進派としては、
高田馬場「真菜板」の杉田さん、
笹塚「マルセウ本間商店」の本間さん、
竹鶴の石川杜氏、そして、私。
このように、加水についても意見が分かれている。
次回、酒と水の関係について私見を述べたいと思う。


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2007年2月22日(木)

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